西洋絵画の歴史1 ルネサンスの驚愕 高階秀嗣監修 遠山公一著

2013年10月6日初版第1刷発行

 

ヴァティカン宮「署名の間」と呼ばれる部屋に描かれた壁画≪アテネの学堂≫ラファエロ作はよく知られた15世紀ルネサンスの集大成であるとともに16世紀初頭の盛期ルネサンスを代表する大壁画である。中央に自らの著書『ティマイオス』を小脇に挟んで立つプラトンと、自著『倫理学』を携えるアリストテレスを中心に、片膝ついて筆記する数学者・哲学者ピュタゴラス、コンパスを持つ数学者ユークリッド、天球技を持つゾロアスター教の開祖ゾロアスターや地球儀を持つ天文学者プトレマイオスなどが集う。

またシスティーナ礼拝堂内部の写真は、ミケランジェロによる礼拝堂正面の祭壇画「最後の審判」と天井壁画「天地創造」、祭壇壁に向かって右側の「キリスト伝」、祭壇壁に向かって左側の「モーセ伝」がきれいに1枚に収められており、この礼拝堂の内部はこういう構成になっていたのかをビジュアル的にすごくわかりやすく掲載した上で、一つ一つについて詳しい解説をしてくれていて、今まで断片的な知識として持っていたこれら絵画の知識が初めて頭の中で融合させることができた。この写真とそれぞれの絵画をこの本1冊で観ることができるだけでもとても満足だ。

レオナルドの≪最後の晩餐≫は、ミラノの修道院の食堂に描かれた壁画であり、反対側には壁画≪キリストの磔刑≫が対をなしている(サンタ・マリア・デッレ・グラーツィエ修道院の旧食堂)。

フィレンツェ、パラッツォ・ヴェッキオ宮殿の中に「五百人広間」と呼ばれる大広間を作ったメディチ家は謁見の間につくりかえられ、その後、広間天井中央にはヴァザーリの手になる「コジモ一世」の肖像が置かれることになるが、これらは、「五百人広間」の写真がきれいに紹介されることで観ることができる。そして、これらが政の場として利用された歴史も学べるような解説もわかりやすくしてくれている。

一冊の本で、こんなに贅沢な気分を味合わせてくれる本書の美術的価値は非常に高いと思う。