魚の棲む城《中》 平岩弓枝

2014年12月10日発行

 

お北は家族と樽廻船の魚屋十兵衛に身を寄せた。幸二郎が中風を患い、魚屋十兵衛は別宅を提供した。鍼灸医もつけ、効果が見え始めた。お北の子、新太郎は九つに。江戸に久しぶりに戻る。田沼意次は一万石の大名になる。はじめて領地の相良に行く。龍介も同行。東海道鞠子の宿にはお北の一行がいた。十兵衛も同行した。鞠子の宿でお北は意次と久しぶりに再会。十兵衛は意次やお北を見て爽快な気分に。幸次郎の江戸の店は湊屋本家に乗っ取られていた。意次自らがわざわざ十兵衛を訪ね、お北たちへの並々ならぬ親切に礼を述べる。これをきっかけに意次と十兵衛との交流が始まる。弟の田沼意誠(おきのぶ)が一橋家の家老に取り立てられる。家重が隠居し家治が十代将軍に。家治は意次に米や倹約の他に幕府の財政改革は出来ないかと嘆じた。意次は龍介に長崎での海外貿易が下手糞だと話し、十兵衛にも相談するつもりでいた。十兵衛は弁才船ではなく洋船の長所を取り入れた特別な和船で江戸に戻る。幸二郎の看病を長年務めたお北がある日幸二郎に首を絞められ殺されかける。これを機に十兵衛はお北と信太郎の居を移して意次といつでも会えるように調えた。

意次は49歳で側用人に取り立てられる。意次は改鋳ではなく商工業の振興を主張し続ける。木挽町の私邸の主はお北で様々な職の客をもてなした。そこにお志摩が娘登美を伴い訪れた。大奥への奉公を願い、意次がお北を大奥の大年寄松島に遣わしてお登美の大奥への奉公を実現する。意次は重さに関係なく貨幣に表示された通用価値で使用できる通貨に統一して従来の複雑な秤量方式を改めた。