超AI入門 ディープラーニングはどこまで進化するのか 編著:松尾豊 NHK「人間ってナンだ?超AI入門」制作班

2019年2月25日第1刷発行

 

帯封「AIと脳の根本的な違いとは? 人間の真実まで見えてくる、最も明快な6つの講義

ジェフリー・ヒントン(Google)、ヤン・ルカン(Facebook人工知能研究所)のインタビュー収載! Eテレの人気シリーズ、そのエッセンスをこの1冊で!」「

表紙裏「人間のパターン認識をもとに開発されたディープラーニングは、現在、どこまで進化しているのか。AIの仕組みや可能性についてやさしく解説しながら、人間の認知の本質、そして『人間とは何か』という問いに迫る。」

 

目次

講義1:AIと人間の間で会話は成立するのか

講義2:脳とAI、違いはどこにあるのか

講義3:AIは芸術作品を生み出せるのか

講義4:AIロボットの実現はなぜ難しいのか

講義5:AIの画像認識技術で暮らしはどう変わるのか

講義6:AIと人間は融合するのか

インタビュー1:ジェフリー・ヒントン「ディープラーニング誕生までの道のり」

インタビュー2:ヤン・ルカン「人間のように学べるAIを目指して」

 

少し前の本だが、ディープラーニングって今まで何だかちんぷんかんぷんだったのが、少しわかったような気がする。また人間の脳とAIの違いはとても分かり易く書かれていて、こちらは理解がかなり深まった。この分野の入門書としては、素人に分かり易く書いてくれているという意味では大変良い本だと思う。

以下、著者の記述から、この部分は正しいだろうなあと直観的に思った箇所を若干抜粋する。

・何が良く何が悪いのか、何が美しく何がそうではないかを判断できること自体が、人間としての非常に重要な能力であり、それは決してAIには真似ができないものだと思います。

・ロボットには人間にはない長所があります。・・・「クラウドロボティクス」と言いますが、学習したデータを、複数のロボットやAIにクラウド上などで共有させる考え方です。

・私が提唱するのは、人間の知能は、知覚運動系処理の上に、記号系処理が載っている“二階建て”である、という仮説です。

 

P42の「脳の部位とAIの学習法」の図解は大変分かり易い。知的処理の大脳皮質はディープラーニング、情動の扁桃体強化学習、運動の小脳は教師あり学習、短期記憶の海馬は反復・計算。乱暴な説明であるとの断り書きを入れた上で、AIの学習法と脳の各部位の機能の中には類似性があると説明し、その上で脳はAIとは違った処理をしていることは間違いないとする著者の説明はこれまでの自身の中途半端な理解を正す上で大変参考になる。著者は現時点ではAIは意味理解がほとんどできていないがいずれ意味理解は実現するだろうと予測し、それでもAIは人間の脳を超えるところもあれば超えられないところもあると予測する。意味理解という点ではソシュール言語学をものすごくわかり易く解説した上で記号接地の達成可能性に言及して結論を出している点が新鮮。もともと猫という言葉には、ネコという言葉の表層(シニフィアン)と、ネコという概念(シニフィエ)の両方が必要で、英語圏に行くと、ネコという概念は一緒だが、表層が「cat」に変わると説明し、表層から概念への記号接地がポイントだが、AIはここまでいずれ可能だろうと予測する。その上で記号系処理だけでなく、知覚運動系処理をAIが実現することが可能となれば、高度な記号系処理が達成される可能性が生まれるとしつつも、考える行為を支える感じることこそが本当は長い進化の歴史の中では主役であったわけで、両方の相互作用こそが人間の知能の本質だと位置づけ、AIロボットがそこに辿り着けるか否かは夢物語だとしつつ、ディープラーニングの技術の進展のスピードは単なる夢物語とさせない強さを持っていると述べる。

 

かなり強引なまとめ方をしてしまい、著者の論旨からずれてしまった可能性もあるようにも思うが、この分野に関心がある方は、ぜひともこの本を手に取って読まれたいと思う。