GO 金城一紀

平成19年6月25日初版発行

 

裏表紙「広い世界を見るんだ―。僕は《在日朝鮮人》から《在日韓国人》に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子校に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった―。感動の青春恋愛小説、待望の新装完全版登場! 第123回直木賞受賞作。」

 

在日朝鮮人の杉原は、私立高校に通う高3生。同級生の加藤に誘われて加藤の誕生パーティに参加すると、桜井という女性に出会う。桜井から誘われるまま会場を抜け出し、東京タワーに寄った後、小学校の鉄扉を乗り越えて構内に入る二人。鉄扉越しに杉原はキスを初体験する。中学校時代には足の速い先輩と連れ立って相当な悪さをしたが、中3から私立高校に通うため猛勉強を開始。途中で国籍を朝鮮から韓国に変えたのが周囲に知れ渡り、教師にいびられたりしたが、開学一番の秀才正一が庇ってくれたのが縁で急速に親しくなり、高校は別だったが互いに本を紹介し合い読み合う。両親と一緒に済州に行った際に乗ったタクシー運転手から在日を理由に絡まれ、挙句に釣銭を貰えず喧嘩すると、運転手から強盗の濡れ衣を着せられて両親から思い切り殴られる経験もした。その後、杉原と桜井は恋人関係に発展し、杉原は桜井の家に招かれて家族公認で付き合いを続け、趣味を互いに教え合った。夏休みは2人別々にアルバイトをして貯金した。旅行に行く資金を稼ぐためだった。そんな矢先、正一から杉原は電話を貰い、久しぶりに会う約束をしたが、正一とは永遠の別れを経験した。駅のホームでチョマゴリの制服を着た女子高校生に一目惚れした『彼』が、周囲の友だちに煽られて告白しようと近づいた時、彼女は男の視線に驚き脅威を感じ救いを求めた。その視線を受け止め声なき声を聞いた男が『彼』を睨め付けると、『彼』は偶々持っていたバタフライナイフを取り出し、もみ合いになって男の頸動脈にナイフを入れてしまう。男が血まみれになり彼女は救急車を呼ぶよう叫ぶが、列車から乗り降りする乗客は誰も振り向かず、ようやく駅員が駆けつけ救急車で男は運ばれたが出血多量で死んでしまった。正一だった。杉原はショックを受けた。桜井の家に電話して人類のDNAの話をした。桜井にはよく分からない話だったが、杉原が心配になり会い、二人は帝国ホテルのデラックスルームに入った。二人が遂に結ばれそうになる直前、杉原は桜井に聞いて欲しいことがある、今まで隠していたけど、、と言いながら、在日韓国人であることを打ち明けた。が桜井は固まってしまった。杉原は国籍なんか関係ないというが、桜井は父や祖父から中国や韓国の男と付き合っちゃダメだと言われている、なんとなく怖いと告げ、2人の関係は終焉を迎える。その後、杉原は大学受験に向けて猛勉強する中、色々な在日の同級生らと話をする中で、自分は自分らしく誰ともつるまずに生きていこうとしていた。ある時、ちょんなことから杉原は元ボクサーだった父と再び喧嘩した。勝てると思ったが今回も父にやられて前歯を折った。そんな中、クリスマス・イブを迎え、突然、桜井から呼び出された。杉原は桜井から在日と呼ばわれ瞬間、その言葉がいつかこの国を出ていくよそ者呼ばわりする言葉だと考えたことがあるのかと言い、どんな国籍であろうと、自分はライオンとして生きていく、俺をそんな狭いところに押し込めるのはやめてくれ、俺は俺だと言い、桜井も杉原にどうして惹かれたのか正直に告白し、2人は新しくやり直すことになった(了)。

好き嫌いの分かれる小説だと思うが、私はこの作品に共感を覚える。