法と社会 新しい法学入門 碧海純一

高校の上級生や大学の教養課程の諸君に読んでもらうつもりで、この本を書きました。

からはじまるが、その内容は、とても高度です。レベルの高さは尋常ではありません。
しかし「入門書」としては、本当に素晴らしい内容を兼ね備えた良書です。本年1年間通して様々な新書を読んできましたが、私が読んだ新書の中では、私はベスト1だと思います。もちろん、この本は初版が1967年(昭和42年)ですので古いです。私が手にしたのは2010年(平成22年)54版ですので、版が繰り返され読み継がれていることがよくわかるのですが、どうしてここまで読み継がれてきたか、理由は読めば分かるとしか言いようがありません。

まずは目次だけ記します。

まえがき
第1章 文化の一部としての法
 1 「文化」とは何か
   「人工的環境」としての文化 文化は人間に特有のものか 動物の文化と人間   の文化
 2 文化の一部としての法
   社会組織の問題 「法」の定義 法と他の文化良識 法と言語 法と宗教 法   と道徳 法と政治 法と経済
第2章 人間社会の統合
 1 人間の抽象能力とその「生存価値」
   人間と道具の使用 人間と言語 人間の特権としての抽象 脳と言語の「相互   作用」 道具と抽象能力
 2 社会秩序の問題
   社会生活と「人間の本性」 「社会」はいかなる意味で実存するか 人間の学   習能力と社会統合
 3 社会化
   社会化と「良心」 「良心」の多元性
 4 社会化の媒体としての言語
   言語と社会化との関係 人間の言語の特徴
 5 社会化と言語の「個性」
   言語の「個性」とその文化的背景 日本文化と敬語法
 6 社会統制
   社会統制の概念 社会統制と社会化 社会統制のいろいろな種類 法的統制に   おける物理的側面と心理的側面 法的統制と言語 法による重層的な社会統制
第3章 法の発展の一断面
 1 序論
   「歴史」の多面性と法史学 「法と社会」についての先駆的業績 法の発展に   おける「自然」と「人為」 古代の立法
 2 法の発展における犠牲と衡平
   擬制 衡平 ローマにおける「万民法」の発展 イギリスにおける「衡平法」   の発展
 3 近代法の発展における立法の役割
   近代における立法 日本の近代化における立法の役割 第2次大戦後の立法改   革 立法改革の「アフターケア」
第4章 現代社会と法
 1 現代社会における法の機能の増大
   非制度的統制手段の衰退
 2 社会の「法的要請」とその変遷
   「社会工学」としての法 自由主義の「法的要請」とその変遷
 3 法の「第1次統制機能」と「第2次統制機能」
   「秩序と自由」の問題 第1次統制機能と第2次統制機能ー刑事法のばあい
   現代刑事裁判制度の社会的意義 第1次統制と第2次統制との関係
 4 法の安定機能と変革機能
   社会生活における安定と発展 国家による「実力」の独占 法における「静的   安全」と「動的安全」 法の枠の中での調整作用とその限界 マルクス主義の   解答 イギリス型の答え 単純な二元論では割りきれない 「フィードバック   」とは何か 近代民主制とフィードバック装置 近代民主制のフィードバック   機構がはたらくための条件 民主制の法的技術に関するソヴィエト圏と西欧圏   との接近
第5章 法学
 1 序説
   日本の法解釈学の大陸的背景
 2 19世紀のヨーロッパ大陸法学
   ドイツ私法学 フランスのばあい イエリングによる「概念法学」批判
 3 自由法論
   「法源」の問題 自由法論の主張 法社会学への要求
 4 アメリカ法学界における革新運動
   アメリカ型の概念法学 社会学的法学 リアリズム法学 ルゥエリンとフラン   ク
 5 社会と法との関係をめぐる経済科学的探究の発展
   「法の経験科学」に対する法学内部からの要求 欧米における法 社会学的研   究のはじまり 日本の学界における法社会学の発展 第2次大戦後の研究
むすび
第37版への後記

目次を見るだけで、いかに根源にまで遡って調べ、考え、言葉を使うことの意味、そして法の持つ役割、そして、それを現実また現代社会の中で、ミクロ的でかつマクロ的に物事を見る学者としての吟司が伝わってきます。

また明年も面白い本にめぐりあえる一年でありますように。