宇宙を織りなすもの(下) 時間と空間の正体 ブライアン・グリーン 青木薫訳

下巻は、上巻に比べ、より専門的で、門外漢には難しい内容でした。読了するのに3倍くらい時間がかかりました。第10章と第11章の「インフレーション」から、第13章の「ブレーン」、「サイクリック宇宙論」あたりになると、あまり理解できなかったように思います。
それでも、ひも理論/M理論が11次元を必要とするという従来から言われている内容については、今までよりも少しは理解できたような気がします。
ただ、第14章以下になると、今度は比較的読みやすくなります。「重力波」「ヒッグス」を始め、「テレポートとタイムマシン」(第15章)、宇宙はホログラムかもしれない等(第16章)あたりは、一気に読めました。

科学的知見のあまりない素人にも、少しでもイメージが付くよう、物理学者でもありサイエンスライターでもある著者が平成21年に著したのが本書です。その後、重力波が一昨年観測されたとの報道があったりしました。そこで著者のように、現時点までの更なる物理学・宇宙学の進展を分かりやすく書いた書籍があれば、是非とも読んでみたいと思います。ほんとに未だに「空間」と「時間」の正体が分からないというのは不思議です。

その上で「なめらかで穏やかな時空は、平均化というプロセスを経てはじめて立ち表れてくる」(354頁)。「平均化のプロセス」によって時空の基本構成要素の相貌は大きく変貌し、そこから我々が日常経験する時空が生じている、ということになりそうだという指摘は、その奥に、何かしらとてつもない法則というのか何というのかはわからないけれども、人間がもしかしたら覚知できるミソがここにありそうな気がしました。