2019年8月6日初版第一刷発行 9月8日第三刷発行
まえがき
PART1「下級国民」の誕生
1 平成で起きたこと
2 令和で起きること
PART2「モテ」と「非モテ」の分断
1 日本のアンダークラス
2 「モテ」と「非モテ」の進化論
PART3 世界を揺るがす「上級/下級」の分断
1 リベラル化する世界
自由(自己実現)と自己責任が光と影の関係であることは、1943年、ドイツ占領下のフランスで出版された『存在と無』でジャン=ポール・サルトルがすでに指摘しています。
「人間は自由の刑を宣告されている。なぜなら、いったんこの世に放り込まれたら、人間は自分のやることなすことのいっさいに責任を負わされるからだ。(人生に)意味を与えるかどうかは、自分次第なのだ」(『存在と無 現象学的存在論の試み』ちくま学芸文庫)
2 「リバタニア」と「ドメスティックス」
ロバート・ライシュはクリントン政権で労働長官を務めたリベラル派の経済学者ですが、早くも1991年に、世界的ベストセラーになった『ザ・ワーク・オブ・ネーションズ』(ダイヤモンド社)で「グローバル化」と「知識社会化」がアメリカの中流階級を崩壊させることを警告しました。ライシュはこの本で、将来のアメリカ人の仕事は①ルーティン・プロダクション(定型的生産)サービス、②インパースン(対人)サービス、③シンボリック・アナリティック(シンボル分析的)サービスに分かれると予想しました。・・(③は)「問題解決や問題発見、データ、言語、音声、映像表現などのシンボルを操作する戦略的媒体」にかかわる仕事で、エンジニア、投資銀行家、法律家、経営コンサルタント、システムアナリスト、広告・マーケティングの専門家、ジャーナリストや映画製作者、大学教授などが属します。これらの仕事の本質は、「数学的アルゴリズム、法律論議、金融技法、科学の法則、強力な言葉やフレーズ、視覚パターン、心理学的洞察をはじめ、思考パズルを解くためのテクニックなどのさまざまな分析ツールや創造のためのツールを用いて抽象的なシンボルを再構築」することだとライシュはいいます。これを要約すれば「知的でクリエイティブな仕事」ということになるでしょう。
エピローグ 知識社会の終わり
ベーシックインカムはなぜ破綻するのか?
貧しいひとびとの「経済合理的」な行動によって、裕福な国のべーシックインカムは確実に破綻する。
最後に、
「『技術』と『魔術』が区別できない世界」、すなわち「知能は意味を失って知識社会は終わる」とまとめられている。そして「早晩、大多数のひとたちにとって『教育』はなんの意味もなくなる」と予言している。なんとも不気味な将来予測です。そこで示された処方箋も、何とも味気ないものと思います。
さて、未来予想図を夢あるものにどのように描いていくべきか。考える材料になる一書ではありました。