小説『方舟さくら丸』には、国家の「壁」と「ボーダー」というナショナリズムにまつわるモチーフが詰まっているという。
読んだことがないので、これだけで分かろうとしても土台無理なのは承知。でも、それにしても理解が追い付いていかない。
アイデンティティがはっきりしないが故に国家や団体に帰属すること自体を問い続けた安倍公房に惹かれたという趣旨のことが書いてあるように理解したが、やはり自分にはそういう感覚が薄い。しかしそういう感覚を少しでも理解する、感じるということも、時には必要な気もする。
俯瞰の視点が重要であるという。
結びは、「それぞれが自分で舵を取れる知性の力を備える。たとえ群れのなかで生きていても、流されずに立ち止まって、俯瞰で人間の生きざまを観察する能力をもつことができるように、自立した精神性を鍛えること。社会が大きな不安と混乱に陥っているいまのような時代にこそ、安倍公房が鳴らしつづけた警鐘に耳を傾けるべきではないかと、私は思っています」とあった。なんとなく、そうかなあと思いつつ、何か全体がモヤっとしています。もっと頭を鍛えないと、いけない、ってことなんだろうね。