ニセ札鑑定人の贋金事件ファイル  鑑定人しか知らない事件のウラ話満載  吉田公一

2021 年 7 月 26 日 1 刷発行


我が国最初の貨幣と言われる「和同開珎」が登場した西暦 700 年代から既に贋金が出回っていたし、次々に新しい官銭が作られても次々に偽造されてきた歴史がある。江戸時代、明治時代、昭和初期時代、第二次世界大戦後の贋金事件を取り上げ、また現在の日本銀行券には発行時期により B 号券から E 号券までに区別され、どんな特徴があるかを詳細に説明した上で、日本や世界各国の偽造防止策を詳しく述べている。日本では「すき入れ紙製造取締法」という法律で、お札に使われている「スカシ」「黒スキ」については製造自体が禁止されている。また海外では、紙ではなく合成樹脂で作られた「ポリマー紙幣」と呼ばれる紙幣がある。また真偽判別マーク「ユーリオン」はオムロン(旧立石電機)が 1994 年に開発したものらしく、世界各国の印刷局コピー機メーカーに取り入れられていて、コピー機でお札を印刷しようとしてもコピーできないようにしてあるらしい。へ―、そうだったんだ。ドルのニセ札が一時期話題になったが、北朝鮮の高官が作ったと言われる「スーパーノート」と真券との違いについて図入りで説明している(92 頁)。後半の第 4 章では戦中戦後の代表的な贋金事件、第 5 章では贋金を取り巻くトピックスを取り上げている。
著者は警察庁科学警察研究所文書研究室室長兼法科学研修所教授、同附属鑑定所長を歴任。日本法文書鑑定研究会会長も務める。いわゆる科警研には国家公安委員長が定めた「偽造通貨取扱規則」があり、国内で発見された全ての偽造通貨がここで扱われている。
畑違いの分野だが、こういったことを仕事にしている人もいるんだな、という素朴な感想を抱く。それにしても贋金作りというのは昔から今に至るまで連綿と続いているっていうのは、人間の性を見るようで、ちょっと面白い現象でもある。