独学勉強法 柳川範之

帯封「テーマ設定から資料収集、本の読み方、集めた情報の整理・分析、成果のアウトプットまで-高校へ行かず、通信制大学から東大教授になった自らの体験に基づく、今本当に必要な学び方。」「学者・研究者になりたい人はもとより、資格試験合格を目指す人、趣味を極めたい人、もう一度学び直したい人等々 あらゆる向学心に応える本。」

表紙裏「いきなり勉強してはいけない。まず、正しい『学び方』を身につけよう。日本の学校ではあまり『学び方』を教えてくれません。勉強は中身だけではなく、どうやってするものなのか、という学び方をもっとマスターする必要があります。本書は著者の長年にわたる独学経験に基づき、『自分で目標を見つけ、問いを立て、集めた情報や知識を自分の中に落とし込みながら考えを深め、それを現実に応用していく』という勉強の全工程について、具体的なやり方を体系的にまとめたものです。」

 

目次

第1章 新しい「勉強」が必要とされる時代

第2章 なぜ独学が、一番身につく勉強法なのか

第3章 勉強をはじめる前にやっておきたいこと

第4章 新しい分野に、どう取りかかり、学びを深めていくか

第5章 学びを自分の中で熟成・加工し、成果をアウトプットする

 

以下は、私が著者のオリジナリティーを感じた箇所です。

 

・学問を学ぶ基本的理由は、学問は情報をうまく選ぶための基準を与えてくれるから。

・得られた情報や知識を自分の中でどう加工するかをじっくり考え熟成させることが大事。

・理解のスピードが速い方がよりよく理解できているとは限らない。理解に時間がかかる人の方がはるかに深く理解しているかもしれない。

・勉強とは人生の方向転換をするための手段。

・世の中にはまだまだ解決していかなければならない問題はたくさんある。何がまだわかっていないか、何が解決できていないかという視点で見ていくと、それを解決していくにはどうしたらいいかという方向に発想が向かう、そうすると、どんなテーマで勉強したいのかという方向性もある程度見えてくる。

伊藤元重先生の授業にもぐりで参加して『国際貿易論』で分からないことを終了後に質問した。どこのゼミ?と聞かれて東大の学生ではないと正直に答えると、じゃあ、うちのゼミにいらっしゃい、と言われ、これが人生を変えることになった。たった一つの質問で道が拓けることもある、という格好の例。

・本に書かれていることをただ知っただけでは学んだことにはならない。

・書くと忘れてします。スケジュールを手帳に書き込むのは頭から消すため。手帳に書いたとたんに忘れてもよくなる。それで気が楽になる。メモを取るのも同じこと。書いた瞬間に頭の緊張感がなくなり、無意識のうちに書いてあるから大丈夫と思ってしまう。

・本当に覚えておかなくてはいけないデータはノートにメモする。

・今、私がメモしているのは、思いついたアイデアの断片、人から得た断片的な情報のようなものだけ。

・メモを取って安心する人は、メモを思い切ってやめた方がいい。

・本当は理解できていないのに要点をまとめたり要約するのは分かった気になってしまうおそれがあるので注意が必要。

・事実は素直に受け入れる段階があるが、意見についてまで全面的に信用することは留保せず、むしろ著者に反論しながら読むという読み方をすることで自分の頭の中で考える能力を身につけることができる。

・歴史的な事実から何時の時代にも通じる普遍的なストーリーを読み取るという普遍化の作業は重要。それにより自分なりに理解してきたものがもう一段開熟成されていくきっかけになる。

・速いから優れているというわけではない。

 

メモを取ることの功罪、頭の速さの功罪など、色々考えさせられることが多かった。メモを取ってしまうとかえって油断して頭に残っていないとか、頭の回転が速いが故にかえって深くじっくりと掘り下げることができないなど、自省のきっかけとなった。