星雲遥かに(一)(二) 大内俊助の生涯 佐藤雅美

2016年6月10日発行

 

主人公の大内俊助は仙台伊達藩の大番氏出身。江戸の昌平坂学問所にやって来る。時は水野忠邦による天保の改革の時代。学問所には全国各藩から秀才、天才が集まり、共同生活を送りながら忙しい毎日を送っていた。俊助の同室には小嶋啓四郎と緒方文吾がいた。学舎は吉田健作。健作のライバルだった緒方文吾は、ある時、何者かに濡れ衣を着せられ、学問所を去った。南町奉行鳥居耀蔵が先を見通す渡辺崋山を罠に嵌めたかの如く。当時の学問は朱子学が中心だったが、俊助は朱子学に疑問を感じて次第に空しさを感じ始めていた。俊助はある時、啓四郎から自分が幕府の隠密だと明かされ、文吾も恐らくそうだと聞かされた。啓四郎から用済みに扱われ国に帰ると聞かされ、俊助はある女に翻弄され失恋を味わい、水商売の女を初めて知った。