直感と論理をつなぐ思考法ーVISION DRIVEN 佐宗邦威

はじめに
 ふつうに生きていると、僕たちの脳はずっと「他人モード」になっており、「自分がどう感じるか」よりも、「どうすれば他人が満足するか」ばかり考えている。
「自分モード」のスイッチを切ったまま日々を過ごしていると、僕たちは「何がしたいのか」を思い出せなくなる。

「外部」ばかりを見ているうちに、「自分たちの原点」=「そもそも何がしたかったのか」を見失ってしまう。

「戦略」×「デザイン」は、一見矛盾した組み合わせに思われるかもしれないが、「戦略」=「理想とする状態を定義し、現状とのギャップを埋めるための筋道を見つけること」、「デザイン」=「いまだ存在しない概念(道)を具体化していく手法」とするなら、両者の組み合わせは意外と相性がいい。
個人・組織が持つ「妄想」を掘り起こし、それを「ビジョン」に落とし込み、その「具体化」までをお手伝いするのが僕たちの仕事だ。

★ものすごくうまい導入だと思います。これだけで一気にこの本に引きづられていきます。


序章 「直感と論理」をめぐる世界の地図
PDCAが支配する「カイゼンの農地」
・「論理」を手に領土拡大を目指す「戦略の荒野」
・目的の難民たちの新天地「デザインの平原」
  デザイン思考というのは、個別具体的な直感・イメージだけを重視するものではない。非線形的な思考モードへの再評価からスタートしながらも、単なる思いつき・妄想で満足したりはしないのである。むしろ、直感と論理とのあいだを自在に行き来する「往復運動」こそが、デザイン思考の本質だと言えるだろう。スタンフォード大学で提唱された「両脳思考」でも、思考のLモード(言語脳)とRモード(イメージ脳)を自覚的に切り替えながら、発想を磨き上げていく手続きが推奨されている。
・「有用性」から解放された「人生芸術の山脈」

第1章 最も人間らしく生きる
第2章 すべては「妄想」からはじまる
第3章 世界を複雑なまま「知覚」せよ
・センス・メイキングの3プロセス
 ①感知ーありのままに観る
 ②解釈ーインプットを自分なりのフレームにまとめる
 ③意味づけーまとめあげた考えに意味を与える
第4章 凡庸さを克服する「組替」の技法
・De-Sign=概念を壊してつくり直すこと
  そもそも「デザイン(design)」という言葉は、ラテン語のdesignare(デーシグナーレ)を語源としているが、これは「分離すること、はっきりさせること」を意味する接頭辞(de)と「印・記号」(signum)から成り立っている。ここからもわかるとおり、行為としてのデザインには、対象を構成要素に分解したうえで、再びっ組み立て直すというニュアンスがある。デザインとは組替そのものだと言ってもいい。
組替=分解+再構築
  再構築のステップ① 発想に「ゆらぎ」を与えるアナロジー思考
  再構築のステップ② 「アナロジー的な認知」を促す3つのチェックポイント
   1 ターゲットの構成要素がつかめていない
   2 ソースの引き出しが少ない
   3 相違点ばかりにフォーカスしてしまう
  再構築のステップ③ 「制限」があるほうがまとまる
第5章 「表現」しなきゃ思考じゃない!
・早めの失敗は儲けものー「鳥の目」と「虫の目」
・「速さ」こそが「質」を高める
  マシュマロ・チャレンジ

2019年3月6日 第1刷発行
2019年4月18日 第5刷発行

妄想を視覚化する「ビジョン・スケッチ」(157頁)
要素分解を行う「あまのじゃくキャンパス」(188頁)
メタファーを組み込んだ「アイデア・スケッチ」(201頁)

あなたの妄想(ビジョン)を一発で伝えるポスターを作っていく。盛り込む要素としては、次の3つを参考にしてほしい。
 ネーミング ビジョンが持っている「本質」を端的に表す名前
 コピー そのビジョンの「魅力」が伝わってくる短いフレーズ
 キービジュアル ビジョンのメタファー(比喩)を含んだ視覚要素
終章 「妄想」が世界を変える?
・妄想を「社会の文脈」から問い直してみる -真・善・美
おわりに 夢が無形資産を動かす時代

★気になった見出し・項目・本文をちょっとだけ引用させてもらったが、このようなキーワードが散りばめられた、そして著者自身の工夫が具体的に紹介されている本書はこの手のテーマに関心がある方にはお薦めできる一冊だと思います。