マーガレット・サッチャー 「鉄の女」と言われた信念の政治家  筑摩書房

 

2014 年 8 月 25 日 初版第 1 刷発行


イギリス・グランサム(この地域の最も著名な人物はアイザック・ニュートン)出身で食料品店の娘だったマーガレット。メソジスト派教会の両親の下で敬虔なキリスト教徒として育てられ、最年少の市会議員に当選しゆくゆく市長にまでなる父の下で政治的素養を幼いころから身につけ、苦学しながらオックスフォードに進学するものの、そこで初めてラテン語に出会い猛勉強してラテン語を習得。学生時代に保守協会会長として活躍しはじめ、国会議員を目指すようようになり、後に生涯の伴侶となるデニス・サッチャーと出会うことで有力なバックボーンを得、双子の母となった後もわずか 4 か月後の試験で弁護士資格を取得し、弁護士、母親、そして政治家になる夢を持ち続け、「血液の中にまで政治が入っていた」と本人が語るほどに政治にのめり込み、遂に保守層が厚いフィンチリー選挙区から 34 歳で初当選。デビュー演説の際も図書館にこもり資料をもとにひたすら論理性を重視し事実をいかに人々に効果的に知らせ納得させるか検討し綿密な準備の上で臨んだ議場での 30 分間の演説は多くの議員に感銘を与え鮮烈な政治家デビューを飾る。当時マーガレットは「アンナ・レオンオーウェンズのようになりたい」と語ったそうだが、シャム(現在のタイ)に渡りシャム王室に西洋の教養とマナーを教えた女性家庭教師を例に上げて、「彼女は奴隷制度を廃止させようという決心をもってシャムに渡りました。そしてその目的を成功させたのです。使命感をもって難題に取り組んでいく彼女のような生き方に私は共感します」と語った(『アンナとシャム王』という本の著者で、その作品は『王様と私』というミュージカルにもなった作品なので、見てみたい)。36 歳で政務次官に抜擢され様々な影の閣僚体験を積み重ねた後、50 歳で遂に初の女性党首となり」ソヴィエトから鉄の女と呼ばれるや、この呼称を自らの選挙演説に取り入れ、「イギリスは今、鉄の女を必要としている」と述べ、「アイアン・レディ」と呼ばれるようになる。そして 53 歳で総選挙に勝利し初の女性首相に。「不和のあるところに調和を 誤りのあるところに真実を 疑いのあるところに信念を絶望のあるところに希望をもたらしたまえ」という聖者の言葉をいつも口にし「さあ、いつも通り、仕事です」と強い信念をもって突き進んだ。当時イギリスは社会主義の状況にあり、小さい政府を標ぼうし、また 250 名のイギリス兵士が亡くなったフォークランド紛争では死者が出るたびに手紙を書き続けた。約 11 年間首相を務め上げ、新自由主義で経済を立て直しイギリスを復活させたのち、65 歳で首相を辞任。信念の政治家、最も愛され最も嫌われた首長。それがマーガレット・サッチャー。2013 年 4 月 8 日、87 歳で永眠。
鉄の女と呼ばれたマーガレット・サッチャーについては大勢の人の記憶に残っていると思う。でも若い時からこんなに苦労した人であり、どうしてこれほど評価された人なのかについては殆ど知らなかった。この本はその一端を知ることができる貴重な書物です。