2014年2月28日第1刷発行
十返舎一久の東海道中膝栗毛を分かり易く現代語でリライト。膝栗毛とは、自分のひざを栗毛の馬のごとくにしててくてく歩いて旅をすること。
駿府のとちめん屋の若旦那・弥次郎兵衛と芝居小屋にいた北八のコンビが江戸・日本橋からお伊勢参りの旅に出る。二人から袖にされたおつぼと駒吉がすぐあとから二人の後を追っていく。途中で同宿した駒吉から路銀を盗まれ、おつぼから衣服を借りて女形になった北八が路銀を稼ぎながら旅を続ける。駒八を見つけた二人は路銀を盗み返そうと女形になった北八が仮病を使って道路に倒れ込みそこに通り掛かった駒八が助けようと近くの寺に入って懐に手を入れたところで弥次が登場して役所につき出すと脅して路銀を取り戻す。浜松から先は夜に人を化かす狐が出ると聞き、弥次は先に北八を行かせたのはいいものの、次々に登場したおつぼや駒吉がいずれも狐が化けたと思って二人をはじき飛ばす。心配になって戻ってきた北八も狐が化けたと思い込んだ弥次は、北八もポカポカ殴りつける。ところがどうやらいずれも本物だったようで北八が可哀想。でもとてもコミカルな場面です。お伊勢参りを済ませると(ここで北八はおつぼに着物を返したため、おつぼと駒吉が路銀を取り戻されたのがこの二人であることに気付く)、大阪から京都に向かって船旅に出る。が、途中で酔っ払って乗る船を間違えて再び大阪に戻る。歩いて京に向かい、方広寺の大仏潜りでは大きな弥次が引っかかって大騒動に。宿に泊まると、変装したおつぼと駒吉が宿屋の主人に化けて二人の酒に眠り薬を入れて再び二人から有り金全部を騙し取ることに成功。取っては取られを繰り返す、このバタバタ感が膝栗毛なんですね。その後、大阪で拾った宝くじ、「一の富、八十八番」が大当たりと聞いて100両を受け取る前日に飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをした翌日に座磨の宮に出かけ、酒盃を盛られるやあれこれねだられても二つ返事をして、いざ交換となって出したくじが亥の八十八番。でも本当の当りくじは子の八十八番だったので弥次は腰を抜かしてしまう。大阪の町を歩いていると、駒吉がぶつかってきてスリで盗んだ財布を弥次の懐に忍び込ませる。その直後スリにあった恰幅のいい旦那が駒吉を捕まえる。が財布が出て来ない。そこへ弥次が登場して弥次たちに帰りの旅の金子を用意してくれた。これで大阪から江戸にもどる二人。最後に、おつぼと駒吉が登場して、まさか財布を返しやがるとはと悔しがる駒吉に、おつぼは「ま、いいさ。ここから江戸まで、まだまだ先は長いんだ」と。はてさて、これから130里の旅がどんなことになるやら、と読者に空想を楽しませておしまい。軽妙なテンポで進む、見事なストーリー展開でした。