エマソン選集7 たましいの記録 小泉一郎/訳

昭和36年8月1日初版発行 昭和44年3月1日3刷発行

 

兄弟の中で最も凡庸とみられたエマソンが、劣等感や病弱などの不幸を克服して、絶対的な自己信頼を強調する立場までいたった刻々の歩みを辿る

 

以下は、本書の中からの、私が気に留めた箇所の抜粋である。

 

1984年12月21日

 青年が「内なるもの」(魂)と「上なるもの」(神)とは同義語にすぎないことを発見する日は、さいわいなるかな。

 

1985年6月29日

 ジョージ・フォックスが人間の心に顕われる神を表現するために選んだ言葉は、「種子」(たね)という言葉である。この世の「美」は彼の言う種子から生じた「花」であり、「善」はその「果実」なのである。

 

7月31日

 毎日迷うことは、「理念」を捜しもとめるべきか、事実を蒐集すべきかという問題である。なぜなら、およそ研究に成功をおさめるためには、思想と事物の結婚が行わなければならないからだ。事実を分類する思想と、思想を示唆する事実との、たえざる反作用が必要なのだ。

 

10月15日

 いっさいの現象の下に、いっさいの現象を生ぜしめるものとして、「万物の理法」と呼ぶ、ある永遠の法則が存在する。

 

1986年4月10日

 奴隷制度とは、人間を猿に変える制度である。

 

4月21日

 私は永遠にものを学んでいこう。

 

7月29日

 学舎は、あらゆる書物のなかに、書物を価値あらしめる唯一のものを読みとることができねばならない。あらゆる書物のなかに、唯一の、朽つることなき「真理の本文」を読みとることが必要である。

 

10月1日

 すべての日は新しい。私が自然になげるまなざしはすべて、私に新しい知識をもたらすものでなければならぬ。日毎の獲物は、明日の目に新たな視力を、明日の耳に新たなメロディーをあたえるものでなければならぬ。

 

10月24日

 賢い人間がいつもとる態度は、「崇敬」でなければならぬ。

 

11月3日

 何でも中途半端にしないこと、人に見せるためにしないこと、お座なりなことをしないことーこれが時間の正しい節約法というものだ。

 

1838年1月27日

 一つの時代において、思想と呼べるものはほんのわずかしかない。現在でいれば、ワーズワスはほんとうの思想を持っている。もっと真実な意味でゲーテはものを考えている。ふたりとも文学の極度の貧寒さをさとっていたのだが、他のすべての学識ある人びとは、才能の人にすぎず、それぞれ自分にできる言葉の芸当をやってみただけにすぎない。