クララとお日さま カズオ・イシグロ 土屋政雄訳

2021年3月15日初版発行 2021年3月18日4刷発行

 

帯封「ノーベル文学賞受賞第一作 カズオ・イシグロ最新長篇 世界同時発売『イシグロ。AIロボット。少女。境界を越えた心の交流。読まずにいられるわけがない』是枝裕和(映画監督)」「クララのひとつひとつの言葉と行動は、彼女を読む者の「内」に、生きるものが持つ可能性という光模様を放散する。彼女こそ美しく発光する存在だ。クララはカズオ・イシグロが創ったもっとも美しい子供だ。『クララとお日さま』は、私にとってもっとも美しい小説となった。―河内恵子慶応義塾大学名誉教授イギリス文学)本書解説『美しい子供』より」

表紙裏「人口知能を搭載したロボットのクララは、病弱の少女ジョジーと出会い、やがて二人は友情を育んでゆく。生きることの意味を問う感動作。愛とは、知性とは、家族とは?」

 

一世代前の型で、観察と学習への意欲に富み、取り込んでいく能力に飛び抜けて精緻な理解力を持つ人工親友(AF)のクララが、病気がちな十代前半の少女ジョジーとの間で、友情のようなものを築いていく。その一方でクララと幼馴染のリックは、向上処置を受けられず、でも才能があるから独学で大学に行かせようとする母を一人残して大学に行こうとしない。そんなリックに大学に行く気を起こさせようと母はクララに説得を頼む。すると母は、クララからジョジーも同じような説得をリックしていたことを聞かされ、また自らが孤独になるような説得を勧める母への驚きの声をクララから聞いて、クララの優しさを褒める。このあたりは、ロボットでありながら、ほんわかとした温かさを持つクララの存在が際立つ一コマ。リックもジョジーの話を聞いて大学進学のために勉強に打ち込むことを誓う。リックの大学面接の場は本筋と関係ないかもしれないが、なかなかストーリーとして盛り上がるものがある。その後、結局、ジョジーが大学に行くことになり、最終章で、突然、クララは、お役御免とばかりに、廃棄場で、元の店長に出会い、感謝の言葉を述べて、物語は終わる。

 

なんか、ちょっと後味が悪いなあという気がします。機械の悲哀というものを醸し出しているような気もしますが。