2022年12月28日第1刷発行
表紙「DXの実現に向けた第1歩 『紙と押印』から『電子署名』への移行に関する法的リスクコントロールについて、最新の法令改正等を踏まえた対応を弁護士がわかりやすく解説!」
これまであまり関係のない分野だったが、コロナを契機に一気に世界のDX化が加速しそうだ。そんな時、ふと、本書のタイトルを見て、思わず手に取ってみた。経験値がないために実感がわかないことも結構あるが、初歩的な入門書として分かり易く書かれているように思う。
第1章 デジタル化とDX
第1 デジタル化とDXの違い
第2 紙と押印
第3 電子署名・電子契約、その他トラストサービスの概要
1 電子契約 法律上の定義がない。
著者は合意に至った契約内容をPDFとし、PDFに電子署名法の適用がある電子署名を付すことにより契約成立とする方法、が最も安全な方法であるとしている。
2 電子署名は、公的機関提供のものと、電子署名業者提供のものがある。前者には商業登記電子署名とマイナカードに格納される電子署名がある。後者はサービス業者による分類として認定認証業者とそれ以外の業者に分けられ、前者は10社あり、後者は拡大している。電子署名サービスはローカル型、リモート型、クラウド型がある。
電子署名法では電子署名の定義が存在するだけで、デジタル署名や電子サインの定義は存在しないが、法2条の定義要件と法3条の推定効発生の要件を慎重に検討する必要があるとする。
電子印鑑や電子サインについても法2条、3条の要件を充足するかの検証が必要。
3 その他トラストサービス
タイムスタンプは電子帳簿保存法対応が容易になる。eシールについては今後普及していくことが予想される。
4 関連する主要法令 ①電子署名法 ②電子委任状普及促進法 ③商業登記法に基づく商業登記に基づく電子認証制度
第4 電子契約・電子署名の導入検討
1 押印と電子署名の比較
・商業登記電子署名
・3条電子署名(当事者型)
・3条電子署名(事業者型)
・2条電子署名
2 電子署名を利用したデジタル化・DXのメリット・デメリット
3 デジタル化プロジェクトの進め方
4 自社の体制整備
5 取引先への展開
第2章 電子契約の法的論点
1 様々な法的問題のマッピング
2 クロスボーダー契約に関する法的問題
3、4,5、6 国内契約に関する法的問題(実体法)(民事訴訟法)(業規制)(行政手続による規制)
第3章 電子署名法の法的論点
1 電子署名法
2 3つのQ&A 押印Q&A、2条Q&A、3条Q&A
3 グレーゾーン解消制度
第4章 事例で学ぶ電子契約・電子署名の論点(国内編)
第1 企業間電子契約の事例検討(基礎編)
1事例紹介 2X社における社内の体制整備 3企業間の電子契約にまつわるリスク概観 43つのアプローチ①契約類型化②総合証拠化③ハイブリッド 5電子署名代行 6電子署名アカウントと電子メールアドレスの問題 7その他実務上の論点
第2 企業間電子契約の事例検討(サイバーセキュリティ対策編)
1事例紹介 2事例への対応策(各論)
第3 企業間電子契約の事例検討(応用編)
1事例紹介 2ファイナンス取引のデジタル化 3その他実務上の論点
第5章 事例で学ぶ電子契約・電子署名の論点(海外編)
第6章 電子署名のその他活用事例
第1 契約以外の文書デジタル化に関する法的問題
1ワンストップサービスの重要性 2会社法・商業登記法 3電子帳簿保存法とインボイス制度(税務経理関連) 4個人情報保護法関連 5文書保存義務と長期署名
第2 契約以外の文書デジタル化
1電子署名を活用した契約以外の文書デジタル化 2行政手続のデジタル化
第7章 電子署名を活用したDXの将来像
第1 DXをサポートする政府の動き 第2 DXによる各部門の将来像
この分野に疎い私でも、ざーと読むだけで、何となく理解できたような気がする。
わが社の中でも関心のある方にはお勧めしたい本だ。