黒い巨塔 最高裁判所 瀬木比呂志

2016年10月27日第1刷発行

 

帯封「いま初めて暴かれる最高裁の闇! 第2回城山三郎賞受賞作家にして最高裁中枢を知る元エリート裁判官が描く本格的権力小説!」「『原発は止めん。それがわしの意志だ‼』最高裁に君臨する歴代最高の権力者にして『超』エリートの須田謙造最高裁長官。司法権力躍進のために手段を選ばぬ須田は、頻発する原発訴訟で電力会社に有利な判決を出すよう、事務総局を通じて裁判官たちを強引にあやつる。徹底的な信賞必罰による人事統制に恐れをなす司法エリートたちは、誰一人須田にさからえない。ソ連強制収容所を彷彿とさせる思想統制に違和感を覚える民事局付の笹原駿は、図らずも須田と対峙する道を選ぶ。最高裁中枢を知る元エリート裁判官が描く、あまりにもリアルな、司法荒廃と崩壊の黙示録!」

表紙裏「著者は、ベストセラー『絶望の裁判所』、城山賞受賞の『ニッポンの裁判』〔ともに講談社現代新書〕等において、日本の裁判所の前近代的な官僚機構と、『裁判』を行うのではなく役人、官僚として事件を『処理』している裁判官たちのあり方を、痛烈に批判してきた。最高裁事務総局民事局付として最高裁の権力構造を目の当たりにしてきた著者が、満を持して、長編小説という自由な形式により活写するのは、最高裁の絶大な権力をめぐる様々な司法エリートたちの暗闘、日本の奥の院といわれる最高裁の長官、また彼のひきいる事務総局が駆使する司法権力の秘められたメカニズム、そして、原発訴訟等の重大案件をめぐる司法部内、司法と政治の、ぎりぎりのつばぜり合いだ。これまでにも、日本の『権力』を描いた小説は多数あったが、日本の権力の普遍的な『かたち』を最高裁に見出し、そのすべてを赤裸々に描き切ったこの作品は、権力の中枢に長く属していた人間でなければ到底描くことのできない、異様なまでの生々しいリアリティーと迫力に満ちている。」

 

司法が政治権力と癒着して、本来あるべき三権の一翼を担うべき司法の役割が、最高裁長官という独裁者により歪められている!というテーマをフィクションを通して訴え掛けている司法小説。著者は繰り返しフィクションであることを強調しているが、書かれている人物や取り上げたテーマ(原発訴訟)そのものはフィクションかもしれないが、司法の内実は実はこのようなものだということを元裁判官の目線で描き切った小説のように思う。ここまで最高裁を悪し様に貶す小説を書く度胸がスゴイ。