東雲の途 あさのあつこ

2012年2月20日初版第1刷発行

 

帯封「『絶ち切れ、絶ち切れ、過去の一切を絶ち切って生きろ』宿命に抗う男たちの悲痛な叫び 同心木暮信次郎、商人遠野屋清之介。屍体に隠された瑠璃石が、因縁の男二人を突き動かす!あさのあつこが放つ時代小説に目眩する、興奮の最新刊‼」

 

弥勒シリーズ第4弾。

斬り殺された屍体が橋桁に引っかかり、検分した信次郎は商家奉公人の外見に騙されることなく体つきから侍と見破り、更に遺体の腹に何か隠されていることから腹の中をまさぐると、腹の中に隠されていたのは美しく輝く瑠璃だった。念のため小間物問屋・遠野屋清之助に実物を見せて確認しようと思って遠野屋に出向く。その時、清之助は、兄主馬の側近伊豆小平太から、弟の屍体を引き取ってもらいたいと依頼されるものの断り小平太が帰ろうとしていた矢先に信次郎と伊佐治は小平太とすれ違う。小平太との関係を詰められる清之介だが清之助は何も語らない。その姿を見た伊佐治は清之介が過去から逃げようとしていると叱責し、己の過去を振り返る清之助。かつて兄と仲良く雪達磨を作って遊んだシーン、しかし屋敷内では兄と絶えず差別され続け、その中ですげだけは清之介を優しく包み込むシーンの回想が続く。すげは思い出の匂い袋を清之介を分け与え、商人として生きて行く覚悟を決めた清之介はおりんに自らの刀を渡して侍と訣別するシーンなどを回想する。そして清之介は自らの過去を信次郎と伊佐治に告白する。すげからもらったお守り袋の中に男が持っていた瑠璃と同じ物が入っていたこと、すげを自ら父に命じられて殺し、それから大勢の者を斬ったこと、お守り袋と太刀をおりんに託して侍と訣別して商人となった過去を。

清之介の過去を聞いた伊佐治は清之助のお供をすると突然なぜか申し出る。その夜珍しくしこたま酒を飲んで家に帰る伊佐治だった。清之介と伊佐治は江戸を離れて清之介の生国嵯波藩に向かう。見送りに来た信次郎は清之介に、“夢は見るなよ、人が無為に死なぬ世の中を商いの力で作る、嗤うしかねえような夢を”と、清之介の胸の中の秘め事をずばり言い当てて餞の言葉にする。生国で源庵が現れて清之介は瑠璃を含めて様々な探索の指示を出す。暗殺の道具ではなく生きた道具として使おうとする清之介。すげの古里の祠は崩れ、誰も住んでいなかったが、瑠璃の原鉱を彫り付けたマリヤ像が崩れて流れた破片が、問題の瑠璃石だったことを突き止めた清之介。この事実を突き止めることで兄と今井の対立を治めることができると信じて生国に来たことを伊佐治に明かす。兄の仇敵筆頭家老・今井義孝に面談した清之介は瑠璃の秘密を伝え、藩財政の立て直しのために紅花の栽培を今井に勧め、搬送のために河底を掘って船が通る工事費用を全額無利子で貸し付け上手く行った暁には商売の独占権を得るとともに今井には執政から降りることを説く。結果、見事、産業として成功させた清之介。

 

嵯波藩ってどこだっけ?このシリーズが完結してもよさそうなくらい、ハッピーエンドでした。