花を呑む あさのあつこ

2017年1月20日初版第1刷発行

 

シリーズ7作目。

油問屋東海屋五平が口に牡丹に突っ込まれて死んだ。女中おときもお内儀お栄も手代の作蔵も五平の足もとで女の幽霊を見たと言う。翌日、五平の囲い者お宮が牡丹の根元で白い襦袢を真っ赤にして死ぬ。五平の事件が起きた時、風邪で寝込んでいた信次郎は、遅れを取り戻そうとして調べに加わる。最初に五平の身体が無傷であることに違和感を持つ。喉を詰まらせたなら喉を搔きむしるはずなのに爪の間には何も挟まっていない。伊佐治は遺体がある部屋の隅に紅が転がっていたのを見つけていた。信次郎は品川宿の旅籠の女将お仙人が訪ねてきて玻璃の簪を買ってやると約束して遠野屋に出向く。伊佐治の家では、息子太助の嫁おけいが二度の流産のショックと何気ない太助と義母の言葉と行き違いで一人傷心して店を飛び出す。清之介の店で信次郎と伊佐治が茶のお替りを貰うと信次郎は五平の牡丹は匂いを消すためだったことに気付く。清之介は信次郎が選んだ簪は見せた中でも一流のものだったことに驚く。伊佐治にはおけいとおふじを年1回の催事に参加できる引札を渡して招待する。清之介のもとに、兄の家来の伊豆小平太が突然やって来る。目的は五百両を借りたいと。理由は兄が病に罹り、痛みを抑える高価な薬を手に入れるためだという。清之介は貸すのではなく兄の為に弟として五百両を用立てる。おけいが飛び出した直後に川で若い女の死体があがる。伊佐治はもしかしてと思いすっ飛んで行く。先に着いた信次郎の顔を見ておけいではないと安堵する伊佐治に信次郎は殺しと断言する。足の裏に小石が食い込んでいて背中に致命傷でないものの切り傷があったからだ。口に鼻を近づけると牡丹の匂いがした。五平のお内儀お栄は五平の死後に清之介の催物に参加したら世間の目が許さないと思い躊躇したが清之介や伊佐治から参加を勧められた。その矢先、3人目の死体が発見されたことを聞いた伊佐治だったが、お栄から本心を聞き出せるのは今しかないと思い、あれこれ五平とお栄の関係を聞き出す。お栄から五平が気鬱の病にかかっていたがいい医者にかかって半年でよくなったこと、3か月前の五平と番頭との会話で五平が金遣いが荒すぎると番頭から諫められていたことがあったことを聞く。お宮とも切れ家に籠ることが多くなっていた五平は一体何のために金遣いが荒くなったのか改めて不審を抱いた。殺された男の袖から出て来たのが遠野屋の書判の切れ端だったのを見つけた信次郎は男が医者であり五平との繋がりに気づく。清之介に確認した信次郎は兄のために金を出したのかと鎌をかける。事情を知らないはずの信次郎が兄のために金を用立てしたことを言い当てたことに清之介は驚きながら、信次郎に兄の病のために薬代として金を出したことを告げると、兄に会って確かめてこいという信次郎。おけいは見知らぬ若い女から慰められて一晩泊まっていたが不審に思い逃げ出してきた。伊佐治がおけいを見つけるが甘い匂いがした。信次郎はここで五平が死んだのは阿片のせいであり牡丹は匂い隠しのためだったこと、女中のおときと手代の作蔵が幽霊騒ぎを起こしていたこと、お宮を殺害したのは恐らくお宮と出来ていた作蔵だと推察する。医者の承庵が殺されたのは小平治に五百両という大金を強請ったため大儲けをすれば見つかるためだ。そしておけいに近づいた女こそが下手人だと見破った。伊佐治が乗り込むと女だけ逃げて作蔵やおときは既に殺されていた。女はおけいにはお世衣と名乗っていたが、信次郎の前に現れたのはお常だった。医者の承庵はお常の旦那で調合の天才だった。お常は信次郎だけは敵を回したくないと言い遺して長崎に旅立って行った。

 

清之介、信次郎に加え、毒婦お常の登場だ。一旦江戸から姿を消すが、また戻ってくるのは間違いない。