ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学 本川達雄

2003年10月25日初版

 

裏表紙「動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い、総じて時間の流れる速さが違ってくる。行動圏も生息密度も、サイズと一定の関係がある。ところが一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は、サイズによらず同じなのである。本書はサイズからの発想によって動物のデザインを発見し、その動物のよって立つ論理を人間に理解可能なものにする新しい生物学入門書であり、かつ人類の将来に貴重なヒントを提供する。」

 

・時間は体重の 1/4 乗に比例する。体重が10倍になると時間は1.8(101/4)倍になる。

・寿命を心臓の鼓動時間で割ると、哺乳類ではどの動物でも1生の間に心臓は20億回打つ。

・標準代謝量は体重の3/4乗に比例する。大きい動物ほど、体重の割にはエネルギーを使わない。エネルギー消費量は体重の 1/4 乗に反比例する。

現代日本人の標準代謝量は2200ワットと言えなくもないが、そこから導かれる体重は4.3トン、つまりゾウとなる。エネルギー消費の上からは、現在人は巨大な生き物である。

・体長1センチ以上の泳ぎ手たちは慣性力が支配する世界に住み、0.1ミリ以下のものは粘性力の世界にいると考えてよい。

・細胞のサイズは動物の種類が違ってもほとんど変わらず一定である。直径約10ミクロン(0.01ミリ)である。植物細胞は50ミクロンもある。この違いが体の建築法や輸送系世設計の違い、進化の機構の違いに深くかかわっている。

 

標準代謝量2200ワットから導かれる人間の体重はゾウと同じ。巨大な人間のはずなのに、人類が文明の利器を手にすればするほど、時間はネズミのようにどんどん早くなっていっている気がする。この謎は本書ではどのように説明することになるのだろうか?あるいは精神に与える影響という別のベクトル・軸をもって考察する必要があるのだろうか?この点はまだ謎のままなのかどうか。生物学と心理学との融合した学問領域にそのヒントが隠されているのかも知れない。