春風伝《中》 葉室麟

2018年5月20日発行

 

上海で晋作は周美鈴らを逃がすために命を懸ける。何故にそこまでするのか聞かれて美鈴の国を思い義のために戦う心に触れたからだと答える。帰国早々に晋作は蒸気船を藩の許可を得ず購入。晋作は雅楽を自害に追い込んだ玄瑞のやり過ぎに自らの路線との違いを感じる。攘夷を仕掛けた長州だが、外国船の砲弾を浴びて軍艦三隻が沈められ、晋作に白羽の矢が当たる。草莽崛起の如く民や百姓の力を借りて馬関海峡を封鎖すれば、勝機を見出すことが出来るかもしれないと考えて出陣し、奇兵隊を立ち上げる。同時に生麦事件をきっかけにイギリス海軍が薩摩城下に砲弾に撃ち込む。8月18日政変が起こり、薩摩が攘夷を棄て、長州藩が一夜にして転落。晋作は土佐の中岡慎太郎を同志と認めて京から山口に戻るが、野山獄へ入牢を申し付けられる。晋作に後事を託し周布は蟄居。池田屋事件勃発。イギリス留学から帰国した井上門多と伊藤俊輔の2人は攘夷をやめ富国強兵の策を取るべしと藩に説くも聞き入れられない。長州は、京に入り、禁門の変、蛤御門の乱を起し、玄瑞は自決、遂に朝敵とされた。薩摩が開国方針に切り替え、連合艦隊と戦った長州は敗北する。晋作が講和使節となり、馬関開港と富国強兵を図る方策を探りつつ変幻自在の外交を行った。