公乱記 上巻 宮城谷昌光

2004年1月30日発行

 

狄県の田氏一族の棟梁は田儋(たん)。甥の田横、田栄と合わせて、田氏の三兄弟と呼ばれていた。狄の田氏の祖は斉の湣(びん)王。楽毅が上将軍となり連合軍を率いて攻めた斉の王だった。斉を滅ぼした秦王は皇帝を自身を称し全土を一人の所有とした。賊を倒した三兄弟は天下第一の人相見の許負から、3人とも王になると言われ、田横は7つの星を探せと言われた。田儋と田栄が賊と通じているとして誤逮捕された。それが間違いだと言えるのは許しかいない。田横は許を追った。湣王の臣下だった華氏を訪ね、三男の華無傷(ぶしょう)と行動を共にし、田既の下に向かった。田既は田吸を訪ねよう指示した。田吸は怪我をしていて、娘の季桐が書翰を許負に届けた。許負は郡守に短文を認めて使者に渡して郡守に届けさせた。季桐には田横が既に星を5つ見つけたはずだ、と言付けた。季桐は田横の妻となる星であるのに7つ目の星に光を奪われてしまうと呟いた。田横は罠に嵌められていた。田吸は田横の身を守るために陶阪を付けた。田横が再び賊に襲われたが切り抜けた。なぜか田儋と田栄が釈放された。許章が郡守の私邸に申報を投げ入れたからだった。命の恩人となった許章が今度は狙われた。田横は許章を匿った。始皇帝は皇太子を北方の郡へ遷した。県令は14名と共に田横を阿房宮賦役に従事するよう命じた。田儋は逮捕され拷問されたときに田横の婚約者小珈を田横に嫁がせるなと持ち掛けられ取引をして出獄した。田横は途中の吊り橋から虚空に消えた。一命を取り留めた田横は蘭という童子と保衣という髭の男に助けられた。蘭は田横を連れて李斯を訪ねた。蘭の父は皇太子扶蘇だった。蘭の為の宮室が建てられ、田横は蒙恬将軍から側近として迎えたいと請われた。田横の新居も建てられた。華無傷を始め14名と再会を果たした。始皇帝崩御した。趙高は脅迫者として宰相李斯を抱き込み、胡亥を皇太子に祭り上げ、皇太子扶蘇は廃嫡された。趙高は偽書扶蘇を自害に追い込み、蒙恬を囚人とした。蘭は李斯邸に滞在していた。陰謀を聞かされた蘭は保衣と共に仇討に向かった。が途中で偶然にも馬商人の健父(保衣の兄)と出会い、そこに田横が合流した。田横は李斯に、胡亥と趙高を女子の手、すなわち蘭が仇討する以外にないと説いた。李斯の間人藺林の案だった。胡亥は兄の公子を次々と何の罪もないのに誅した。そうこうしているうちに時が推移した。陳勝呉広が叛乱の旗を挙げた。