御家人斬九郎《上》 柴田錬三郎

2016年12月10日発行

 

目次

第1篇 片手業十話

    第1話 男ってぇ奴はこんなものさ

    第2話 二兎を追ったら二兎を獲るさ

    第3話 隻腕(かたて)でやるかたてわざだぜ

    第4話 柳生但馬守に見せてやりてぇ

    第5話 直参旗本の死にざまだぜ

    第6話 良人を殺した気持が判るぜ

    第7話 女の怨念はおそろしいやな

    第8話 寺で新仏を作ってやらぁ

    第9話 正義の味方にだってなるぜ、

    第10話 女の嫉妬はこうして斬るのさ

第2篇 箱根の山は越えにくいぜ

第3篇 あの世で金が使えるか

 

主人公は、30俵3人扶持の、四男五女の末子に生まれた松平残九郎。本所割下水のぼろ家に老母と二人で暮らし。徳川家一族の松平家の名門でありながら、御家人の中でも最下級で扶持だけでは食べていけない。神技のような剣技の持主で、表沙汰に出来ない罪人の介錯を仕事(かたてわざ)とし、斬九郎と呼ばれる。老母の麻佐女79歳は、美食好みの大食いで小鼓の名手。斬九郎は「くそ婆」と罵りながら、いさかいが絶えない。斬九郎は、夫から不義密通を犯した妻とその相手を始末するよう依頼されたが、実は江戸屋敷の公金をくすねた夫のことを女房が調べ、それを側用人に報告していただけと見破り、夫の右腕を両断するだけで始末をつけるなど(第1篇第2話)、単なる剣士ではなかった。