強請(ゆすり)池波正太郎短篇ベストコレクション1 池波正太郎

2008年1月25日初版第1刷発行

 

強請

小石川の音羽9丁目で吉田屋という料理茶屋の主人におさまっている半右兵衛は裏では香具師の元締めである。医師秋山高庵から60両もの大金で胃腸の薬を買い求めた。内田勘兵衛は旗本川窪新十郎通則の用人をつとめていたが、半右兵衛から50両でこの胃腸の薬を譲り受けた。内田勘兵衛は当主川窪新十郎の後妻に30以上も違うお喜世を後妻にあてがった。新十郎には平四郎という一人息子がいたが、お喜世は平四郎と姦通して子を宿した。官兵衛は胃腸の薬を少しずつ平四郎に飲ませて密かに殺害し、川窪家の財政を掴み取り、わが娘の生んだ子を新十郎の後継にする計画を立てた。かつて半右兵衛は勘兵衛を使って人殺しをしたことがある。昔のよしみだと言って勘兵衛は半右兵衛に新十郎の用人・渡辺金蔵の暗殺を依頼してきたので応じたことがあった。半右兵衛は。生半可な悪を始末するために腕の立つ先生と呼ばれる男を使って勘兵衛を斬殺した。

 

悪の世界に住む者なら金で殺すことを請け負う木村十蔵は半右兵衛から仏具屋和助の殺害を依頼された。悪人か判断がつきかねた十蔵はなかなか踏み切れなかった。すると半右兵衛は十蔵の一人娘を攫い、一両日中の実行を促した。やむを得ず十蔵は和助を呼び出して切り結び和助殺害を実行した。が自らも深手を負った。金を溜めたら絵をかいて後世を送るつもりだった十蔵は自画像を描き終えると、息を引き取った。

 

殺しの掟

松永彦七郎という腕は立つが色気違いの始末を伊勢屋勝五郎から頼まれた半右兵衛は西村左内に彦七郎の殺害を頼んだ。彦七郎は将軍の侍医の一人の医師金子安斎の妾腹の子友二郎のことを嗅ぎつけ安斎の屋敷をうろつき始めたために勝五郎を使って彦七郎を始末しようとしていたが、その理由を勝五郎は半右兵衛に言わなかった。彦七郎が色気違いだというのも出鱈目で友二郎が彦七郎の妹を手籠めにし、妹が自害したというのが事実だった。半右兵衛は彦七郎を始末したと報告し、宴の場を持ち、安斎父子を呼び出し、彦七郎は敵を討った。半右兵衛は勝五郎に今度やったらお陀仏だと言って金を頭に叩きつけて出ていった。