たった一人の反乱《上》 丸谷才一

1996年9月10日発行

 

学生時代の友人小栗と久々に再会した主人公馬淵英介は、ファッションモデルのマヨとユカリを連れて飲みに行く。家に帰ると出迎えてくれたのは女中のツル。ツルは長年女中として働いてくれていた。馬淵は通産省で働いていたが、防衛庁行きを断ると、民間の家電メーカーに転職。ユカリと関係を持った馬淵はユカリのアパート代を出すようになる。ユカリから偶然を装って馬淵と見合いしようと言われ、翌々日、ユカリの私立大学の文学部教授の父野々村が突然馬淵宅を訪ね、アパート代はどういう性格の金かと尋ねられ、再婚相手の候補の一人にユカリを加えていただきたいと言われる。馬淵は丁重に断るが、父は自らの著作と戸籍謄本や経歴を書いた便箋を馬淵に渡して帰る。馬淵がユカリに電話して結婚する気なんかないんだろう?と尋ねると、それが藪蛇となって結婚する方向に話が向かう。馬淵がかつての媒酌人に相談に行くと、専務が媒酌人となり、ずるずると結婚が既定事実になっていく。結婚式もつつがなく終え新婚生活を順調に送っていたある日、ユカリから祖母が元旦那の殺人の罪で服役した事実を打ち明けられた。祖母用にユカリの父はワンルームマンションを用意するが、淋しくてやり切れないと言って、祖母は馬淵が不在のうちにやってきて女中のツルに事情を話してしまう。ツルとユカリと祖母の3人が仲良くなり、祖母からしばらく居させてくれと頼まれると、1・2日泊って二日酔いがよくなるまで居て下さいと返事した。