2020年7月30日第1刷
表紙裏「在日コリアン一家の苦難の物語は戦後へ。『物語』というものの根源的な力を見せつける対策は1989年に幕を閉じる。劣悪な環境のなかで兄嫁とともに戦中の大阪を生き抜き、二人の息子を育てあげたソンジャ。そこへハンスが姿をあらわした。日本の裏社会で大きな存在感をもつハンスは、いまもソンジャへの恋慕の念を抱いており、これまでもひそかにソンジャ一家を助けていたという。だが、早稲田大学の学生となったソンジャの長男ノアが、自分の実の父親がハンスだったと知ったとき、悲劇は起きる― 戦争から復興してゆく日本社会で、まるでパチンコの玉のように運命に翻弄されるソンジャと息子たち、そして孫たち。東京、横浜、長野、ニューヨーク―変転する物語は、さまざまな愛と憎しみと悲しみをはらみつつ、読む者を万感こもるフィナーレへと運んでゆく。巻措くあたわざる物語の力を駆使して、国家と歴史に押し流されまいとする人間の尊厳を謳う大作、ここに完結。」
第2部 母国 1939-1962(承前)
ソンジャの次男モーザスは16歳で学校をやめて大阪のパチンコのオーナーで太っちょのコリアンの後藤に雇われ、パチンコ店に勤務し始めた。店で働くようになってモーザスは喧嘩をしなくなった。学費は全てハンスが出してくれていたノアは早稲田大学に入り2年が経過した。モーザスは六店舗のフロア長を経験し、店長に抜擢された。ノアは大学一の美女と言われる晶子と交際した。ある時、月1回のハンスとノアとの食事会に突然晶子が誘われてノアに誘われたと嘘を付いた。晶子は両親が人種差別主義者だと言いながら、自身も無自覚な人種差別観を持っていた。ノアは耐えきれずに晶子と絶縁宣言した。すると晶子はハンスがやくざでノアとそっくりだから父親だと言い、ノアは母ソンジャから事実を聞く。そして母に手紙を書いて大学を退学し家を出ていった。ソンジャはハンスを頼ってノアの行き先を探し出そうとした。
第3部 パチンコ 1962-1989
ノアは小学校時代の担任教師の出身地の長野にいた。そこでパチンコ店で事務員を応募していることを知って働き出した。モーザスの恋人裕美は男の子を生んだが、3年後、交通事故で亡くなる。長野に来て7年が経ちノアは結婚し、子供にも恵まれた。更に月日が経過した。ハンスがノアが長野でパチンコ店で働いていたのを突き止め、ソンジャを連れて長野に向かった。ソンジャは45歳になっていたノアと再会した。ノアはソンジャと別れた後、自殺した。モーザスはひとり息子ソロモンの14歳の誕生日パーティーや祖祖母ヤンジンの会葬の際に花から誘惑されて関係を持った。花はモーザスの愛人悦子の子で、3年後、アメリカの大学に留学したソロモンに酒と薬をやって死をほのめかせる電話をかけてきた。花の居場所を探していた悦子だったが、花との親子関係を回復させることができない。日本に戻り外資系の投資銀行に勤務したソロモンの婚約者フィービーは日本人がコリアンを外国人として未だに差別していることが理解できなかった。ソロモンは大型プロジェクトの一員に加えられたが、不透明な出来事が起きるや上司から簡単に解雇を告げられ、また婚約者がソロモンにアメリカではなく日本で生きていく気がしかないことを知って別れを告げる。ソロモンは父にパチンコ店を継ぎたいと申し出、父は日本で蔑まされずに生きていくためにソロモンをアメリカの大学で学ばせて銀行に就職させようとしたが、息子の苦衷を知り、父は帳簿の見方を教えようとした。
確かに一気読みしました。今年読んだ中でダントツの小説です。日本人こそ読まねばならない小説ですね。