1999年2月22日第1刷発行
表紙裏「創設50年を迎えた『マルサ』。すぐれた情報収集力と金の動きの解明能力で、ロッキード事件、ルノワール絵画事件、金丸脱税事件をはじめ、企業や政治家の巨額脱税を数多く摘発してきた。内偵・実施の二班はそれぞれどのように調べ、どう核心に迫るのか。脱税者の巧妙な手口に挑む『マルサ』のたたかいと人間ドラマ。」
目次
まえがき
1 金丸脱税事件
2 切られた封印
3 査察課長の「戦死」
4 マルサの半世紀
5 ルノワール絵画事件
6 史上最大の脱税
7 総会屋汚染
8 日本株式会社の「地下室」
あとがきに代えて-「黒衣」と「黒幕」
・査察部は内偵班15部門(200人)、実施班15部門(200人)。徹底した情報管理のため金丸逮捕の情報は宮沢首相、林蔵相、後藤田法相以外に永田町には漏れず、加藤紘一幹事長代理は予算通過を祝って酒を飲んでいた。割引債が見つけ次第、金丸逮捕の予定だったが、見つかるはずの所から出て来ない。が金丸の次男信吾の部屋から出て来て無事逮捕にこぎつけた。
・国税庁は長官官房と課税部、徴収部、調査査察部の三部門をもっている。調査査察部は国税局で資本金1億円以上の大手企業を税務調査する部門を管轄する調査課と査察課の二セッションに別れる。地方国税局で査察部門を担当するのは東京、大阪、名古屋が査察部、札幌、仙台、関東信越、金沢、広島、高松、福岡、沖縄が調査査察部の査察課であり、合わせて1200人が配置されている。
・「日本株式会社の昭和史―官僚支配の構造」(創元社、1995年)は、ピュリッツァー賞受賞したマクリーシュの1936年9月号『フォーチュン』に掲載された200頁にわたる「大きな溝、日本対米国」や1970年3月7日号『ビジネス・ウィーク』に掲載された特集記事「日本は傑出したインダストリアル・マシーンである」のいずれでも扱われた、戦前から前後に至る日本株式会社を扱っている。日本株式会社の用語を定着させるアメリカ商務省の報告書『日本―その政府・産業界の関係』は「政・官・業」の結びつきを詳細に分析している(日本では『米商務省報告・日本株式会社』のタイトルで出版される)。もっともここには25年に大蔵省、金融界が腐敗から日本を危機に引き起こすことになるかもしれないという影は見えない。商務省が見落としていたからだ。日本株式会社には地下室があり、トンネルでつながっている。特捜部は金融界と闇社会との癒着を抉り出し、大蔵省の腐敗に辿り着く。一連の事件は日本株式会社の地下室を舞台にしていた。
・児玉誉士夫の力の源泉は旧海軍の軍需物質調達機関である児玉機関で集め、敗戦直前に東京に運んだ大量のダイヤモンドだった。手に入れた5万6250カラットのダイヤは現在の金額にすると約7兆円。これを銀座五丁目「緑産業ビル」地下室に保管し、児玉はA級戦犯容疑で巣鴨拘置所に収監される直前ダイヤモンドをすべて鳩山一郎元首相へ提供し、鳩山はこれを資金に自由党を設立。児玉は釈放後、鳩山や鳩山グループの河野一郎、三木武吉らと太いパイプを持つ。
ノンフィクションとは思えない小説のような面白さだ。