日本を想い、イラクを翔けた ラガー外交官・奥克彦の生涯 松瀬学

平成17年11月20日に発行されたかなり古い本ですが、とても感動的です。
 
奥さんは早稲田ラグビー部入部式で次のような講演をしています。「ぼくの同期でキャプテンになった奥脇(教)は1年生の練習のときにこんなことをよく言っていました。『みんな、なんでここできつい顔をするんだ。ここからがいよいよ力がつくところだ」と。」(102p)。また「自分にできないようないろんな高度なプレーをたくさん見てほしい。同じ人間がやっているんだと考えれば、そのやり方を習得する方法があるかもしれないし、できないのには何か原因があるかもしれない。そういうことを四六時中、考えてほしい」(105p)。
またスーム・スローガンは「Ultimate Crush」(相手を完膚なきまでに叩きのめすという意味)。本当に強い相手、困難な局面に対峙したとき、逃げ出すことなく、真正面から向かっていけるかどうかを問う言葉だった(167p)。
 
そして奥さんの外交官時代の早稲田時代のラグビー仲間に送った手紙には「いつから日本人は、これほどまでに自分の都合ばかりで行動するようになったのか。恥ずかしい限りです。このような逃げ腰では、自衛隊どころか国際社会に貢献するなどという台詞は2度と言えないと思います(中略)ここで仲間を見捨てて引き下がるわけにはいかないと思います。僕自身も狙われるようになったということは、それだけワールドカップ級になったということで、名誉なことであります」(203p)と。
 
そして平成15年11月29日、銃弾に倒れ、帰らぬ人となってしまう。12月6日の葬儀所での同期入省弔辞は涙なしにはとても読めない感動的な内容で締めくくられている。
 
端折りすぎて誠に申し訳ない限りですが、本当に感動の一冊でした。一人でも多くの方がこの書籍を手にされることを希望します。