現代社会はどこに向かうかー高原の見晴らしを切り開くこと 見田宗介

2018年6月20日第1刷発行

 

帯封「巨大な視野、最新のデータ、透徹した理論によって、明快に語る〈永続する幸福の世界〉」、「幾千年の民衆が希求してきた幸福の究極の像としての『天国』や『極楽』は、未来のための現在ではなく、永続する現在の享受であった。…けれどもそれは、生産と分配と流通と消費の新しい安定平衡的なシステムの確立と、…そして何よりも、存在するものの輝きと存在することの至福を感受する力の解放という、幾層もの現実的な課題の克服をわれわれに要求している。/この新しい戦慄と畏怖と苦悩と歓喜に充ちた困難な過渡期の転回を共に生きる経験が『現代』である」

表紙裏には「曲がり角に立つ現代社会は、そして人間の精神は、今後どのような方向に向かうだろうか。私たちはこの後の時代の見晴らしを、どのように切り開くことができるだろうか。斬新な理論構築と、新たなデータに基づく徹底した分析のもとに、前書から約10年、いま、新しい時代を告げる。巨大な問いに改めて正面から応答する。」

 

はじめに

 第1の巨大な曲がり角において人間は世界の無限性を生きる思想を追求してきた。

人間の増殖率が1970年代に史上初めて急速な減速に反転した第2の巨大な曲がり角に入っている現代の人間は世界の有限性を生きる思想を確立するという課題に直面している。

 

序章 現代社会はどこに向かうかー高原の見晴らしを切り開くこと

1章 脱高度成長期の精神変容―近代の矛盾の「解凍」

2章 ヨーロッパとアメリカの青年の変化

3章 ダニエルの問いの円環―歴史の二つの曲がり角

4章 生きるリアリティの解体と再生

5章 ロジスティック曲線について

  1 グローバリゼーションという前提

  2 一個体当たり資源消費量、環境破壊量の増大による加速化

  3 テクノロジーによる環境容量の変更。弾力帯。「リスク社会」化。不可能性と不必要性

6章 高原の見晴らしを切り開くこと

補章 世界を変える二つの方法

 

生物学者がロジスティック曲線と呼ぶS字型の曲線は繁栄の頂点の後、滅亡に至る。同じくS字型の歴史曲線を踏まえて現代を捉えると、かつて人類が希求してきた天国や極楽という幻想が実現することはなく、われわれは、生産と分配と流通と消費の新しい安定平衡的なシステムの確立と、個人と個人、集団と集団、社会と社会、人間と自然の間の、自由に交響し互酬する関係の重層する世界の展開と、何よりも存在するものと輝きと存在することの至福を感受する力の解放という幾層もの現実的な課題の克服が要求されている、としている。