生きることの質 日野原重明

2013年12月10日発行

 

・冒頭で、治療よりも、痛みを緩和するのが医師の役割だという箇所に、ちょっとしたショックを受けた。いのちの長さを第一に考えるのはなく、いのちの質、生活の質を重視せよという。

・難民を受け入れないで、日本が平均寿命が世界一だと誇るのは恥だと思った方がいい。アメリカの医学は日本の医学よりもはるかに進んでいる。アメリカはすべての世界の人を歓迎してアメリカという国を作ったわけで、平均寿命も全体として見れば下がるのは当然。

アメリカの常識では中年は55歳から始まる。

・英国には250のホスピスがあるが、日本にはまだ19施設しかない(92年)。

・1970年3月、羽田から飛び立った飛行機が日本の赤軍にハイジャックされた事件に巻き込まれた。

・人間が悲しみに耐えるということがどのような意味をもっているか、耐えることによって人間が本当の人間として生まれかわるというイエスの言葉をオスラー『平静の心』を通して教えられた。

・ニ―バーの祈り「冷静さを求める祈り(セレニティ・プレーヤー)」

「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。

変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。

そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ」(大木英夫著『終末論的考察』より)

・「健全な精神は健全なからだに宿る」という言葉は間違って縮められた。ローマのユヴェナリスは「諸君が聖堂に白豚の汚れなき内臓や腸詰を供えて、神々から何かを求めたい/というのなら/こう願うがよい。健全な身体に健全な心を宿らせてくれと。死の恐怖にも平然たる剛毅な精神を与えよと。」(『諷刺詩』第十歌、国原吉之助訳)

・「死の教育」は小学校から始めた方がよい。曾野綾子さんも同じ考えを持っている。

 

古い本なので、情報は古いと思うが、死というものを直視して生きること、いのちの質を高めることが必要で、いのちの質を無視した延命治療は本来の医療でないことなどは、古くて新しい視点を提供してくれている。こういうドクターはその後どのくらい増えたのだろうか。