シャーロックホームズの冒険 ボヘミアの醜聞 コナン・ドイル 訳大久保ゆう

2023年10月17日第1版第1刷発行

 

1888年3月20日、開業医に戻ったワトソンは、往診の帰途、ベーカー街を通り掛かった。部屋を訪ねると、ホームズはワトスンを見て、幸せ太りし、開業したことを言い当て、便箋を投げて読ませた。間もなく依頼人が訪れた。男はフォン・クラーム伯爵と名乗り、ボヘミアの王室の問題で代理として来たと言うが、すぐにボヘミアの王であると正直に話し、依頼の内容を語った。5年前、皇太子時代にアードラーと親交を結んだ。彼女はコントラルト歌手でスカラ座公演、ワルシャワ帝国歌劇団プリマドンナ、引退したが、近く王がスカンディナヴィア王国の第二皇女と結婚すると聞き付け、かつて二人で撮った写真を先方に送りつけると脅迫してきた。写真が送られればご破算となる。写真を取り戻すためにあらゆる手段を講じたが、失敗に終わった。婚約発表日まであと3日後。それまでに写真を見つけてほしいとの依頼だった。ホームズは変装して情報を集め、ノートンという弁護士がアドラーを毎日訪ねていることを知る。家を見張ると、ノートンアドラーが馬車で出発し、後を追うと、教会に着き、アドラーノートン、牧師の3人は、ホームズに立会人を依頼した。二人が旅行に出かけると取り戻しが難しくなるため、ワトソンに協力を求めた。アドラーが帰宅する時、家の前で喧嘩が始まり、アドラーを守ろうとしたホームズが顔から血を流して大怪我をし、アドラーの家に運び込まれた。ワトソンはホームズの指示通り、発炎筒を家の中に投げ込み、火事だと叫ぶと、その声を聞いたアドラーが咄嗟に写真を呼び鈴のすぐ上の羽目板の中から取り出そうとした。全てはホームズの作戦で、写真の場所を突き止めるのに成功した。翌日王と一緒に取り戻そうと、アドラーの家を訪れるが、旅立った後で、使用人から伝言を聞く。隠し場所には手紙と写真が残されていた。アドラーはホームズだと気がつき、ホームズ相手なら逃げようとして姿を消したのだった。王が探していた写真は結婚するので悪用しない、代わりに自分の写真を手紙と共に置いていった。ホームズは謝罪するが、王は依頼は果たされたと述べ、王から彼女の遺した写真を貰った。以来、ホームズは、彼女を「かの女」という敬称を使った。

 

ホームズの深謀を打ち砕いた女性がいたとは驚きだ。これが短篇集の最初の作品らしい。味わい深いものがありますね。