天と地と《中》 その2 海音寺潮五郎

令和元年10月

 

晴景が景虎を討つために栃尾に兵を向けた。晴景が最も頼みとした房景は晴景の臆病風に吹かれた態度に腹を立てて引き上げてしまった。戦意を喪失した晴景軍に鉄砲を放ち、勝鬨を挙げるだけで晴景は疾駆し去った。晴景は敗走に次ぐ敗走を続けた。定行は上杉定美を訪ねて守護代景虎に就任させる相談をした。晴景は藤紫が生きているのを知って泣いて喜んだ。

 

夢から目が醒めた晴景は上杉定美が訪ねてきたのを知った。定美は晴景を隠居させて守護代景虎に譲ることを説得した。藤紫を連れて逃げた久助番所頭に捕まり、魚津城主鈴木大和守に差し出された。二十歳となった景虎景虎守護職に就き、越後の国主となった。景虎は単身で薬師如来に伺いを立てに行くと言ったが、それは口実で三条の地勢を見に行こうとした。景虎を心配した家臣は松江だけを供にさせた。

 

計略が立った景虎は家臣の前で勝利宣言をした。味方から欺く作戦を定行のみに明かし、景虎は予定通り三条を落とし逆臣昭田を討ち取った。定美が死に、上田の政景の処遇を定行に相談すると、定行は景虎に、景虎の姉のお綾を縁付けるのが良いという。景虎自ら出向き、政景と二人だけで話をした。そこに父の房景が現れ、上機嫌で承知した。

 

お綾は上田に輿入れした。次は景虎。乃美が頭に浮かぶ。毘沙門堂毘沙門天が夢に現れ、愛欲を捨てて武勇に生きることを決めた。将軍家から守護職の承認を得た後、北条氏康との合戦に敗れた関東管領上杉憲政が平井城に逃げ込んだ。憲政が景虎を訪ね、管領職を譲るので北条討伐を頼んだ。武田晴信が、北信州の村上義清の拠点葛尾城を攻撃するために甲府を出発した。北信が武田の有になると越後は直接武田と肌を接することになる。

 

景虎は越信国境の川中島に進入したが、不覚にも敗北した。景虎は京に向かい、途中で魚津城に寄った。鈴木大和守は藤紫を捕らえ側室としていた。上洛に合わせて大徳寺坐禅を組んだ。父の仇敵とも言うべき本願寺を見た時、驚愕した。堺に向かい、見たことがない賑やかな町を見た。鉄砲工場を見、高野山に向かった。琵琶を弾奏した。