2013年12月10日発行
・私は数学を美の追及という立場から文学と同じく芸術の一部門と見なしていた。・・しかし数学と文学が仕事として極く自然に両立し得ると安易に考えていたのは少々楽観的過ぎた。美と調和を追及するとは言え、その方法が極端に異なる。数学における方法は数学的感覚に基づいた論理であり、文学では文学的感性に支えられた表現方法である。数学に打ち込むと数日間は文学をすることができず、数学と文学を結ぶ橋を渡るのに数日を要する。・・数学者も文学者も「永遠なるもの」を希求していることは違いない。ただ文学者が「永遠なるもの」を混沌たるい人生の内に見出そうとするのに対し、数学者はその外に見出そうとしている。
・役に立たない、というのは、価値がないということではない。