公安調査庁 情報コミュニティの新たな地殻変動 手嶋龍一 佐藤優

2020年7月10日初版 2020年8月20日3版

 

第1章 金正男暗殺事件の伏線を演出した「最弱の情報機関」

    MI6という可能性

第2章 コロナ禍で「知らざれざる官庁」が担ったもの

    公安調査庁には細菌・ウイルス戦の情報蓄積がある

           手嶋   コロナ禍のさかな、世界の情報関係者がもっとも注目している毒物・生物・化学・兵器の専門家がいます。アメリカのコロラド州立大学のアンソニー・トゥー名誉教授(90)です。1994年に松本サリン事件が起きた後、トゥー博士はサリンの分析法を日本の捜査当局に指導し、山梨県の山中の土からサリンの分解物を見つける手がかりを提供したことで知られています。このアンソニー・トゥー博士は、新型コロナウイルスの起源について、日本をはじめとするメディアのインタビューに答えて「私見だが、武漢の毒物研究所やその他の関連施設などで培養、研究していた新型ウイルスが未完成のまま、何らかの不手際で外部に漏れたと考えるのが一番適当な説明だと考えている」と述べています。

    事務官なき「公安調査庁」という組織

    「逮捕権」を持たないのにはわけがある

   佐藤   情報機関が、強制捜査権や逮捕権という国家権力を直接行使できる権限を手にすると、地道に人間関係を築いて人的情報、良質なヒューミントを引き出すという能力、機能が弱体化してしまう。相手が怪しいと踏んだら、そんなまどろっこしいことなどせずに、すぐお縄にかけてしまえ。そんなことをしていれば、調査能力は育ちません。

   手嶋   たしかに国際的に見ても、英国のMI6も、MI5(保安局)も、アメリカのCIAも、ロシアのSVR(対外情報庁)も、イスラエルモサドも、みな逮捕権は与えられていないですね。これは、インテリジェンス機関のグローバル・スタンダードだと言っていい。

第3章 あらためて、インテリジェンスとは何か?

    情報提供者に「値札」を付ける

第4章 「イスラム国」日本人戦闘員の誕生を阻止

    奏功した公安調査庁ヒューミント

第5章 そのDNAには、特高陸軍中野学校GHQも刻まれる

    組織の狙いは「右翼勢力の監視」だった

    「破壊活動防止法」の監視対象は、当時の共産党

    公安調査庁が「国際性」を帯びた理由

    特高に捕まりたかったゾル

第6章 日本に必要な「諜報機関」とは

 

今日の日経に売り上げ上位で出ていました。

確かにサッと読めるし、とても分かりやすいです。警察・公安の存在は皆よく知っていると思いますが、公安調査庁という組織そのものはマイナーなので、その組織をこうやって分かりやすく教えてくれたお二人に感謝です。

なぜ強制権限がないのかについても、深い理由があることが分かりました。

こういう発想って、色々なところで制度設計するのにも役に立つもののように思います。