2007年3月10日第1刷発行
Ⅰ 20世紀女性文学の見どころ 児玉実英
1 長編大河小説の伝統、大家族の分裂がどうなったのかという視点から、
『フォーサイト家物語』(ジョン・ゴールズワージー)、パール・バック『大地』、マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』、有吉佐和子『紀ノ川』を紹介。
2 子どもへのまなざしと大人への目配り
19世紀の『アリス』『小公子』より、目線が子どもの目線に近づいたものとして『ピーターラビットのおはなし』『ニルスのふしぎな旅』『赤毛のアン』『あしながおじさん』『風にのってきたメアリー・ポピンズ』『たのしいムーミン一家』を挙げる。
この両方が混在し、人間同士心を通わせることの大切さが語られているものとして『トムは真夜中の庭で』(ピアス)『ふしぎの国のレイチェル』(ロッダ)を挙げる。
3 創作技法の展開
4 戦争にまきこまれた女性たちはどう生きたか
『希はしき子供』(ザイデル)、『第二の性』(ボーヴォワール)
5 外国女性作家たちの日本への関心
『日本のナイティンゲイル』、『龍の画家』(フェノロサ)、『サヨナラ』(ミッチェナー)、
『アメリカ人の目をとおした日本人』(シーラ・ジョンソン)、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(エズラ・ヴォ―ゲル)、『さゆり』(アーサー・ゴールデン)、『紫式部物語』(ライザ・ダルビー)
6 個の声をあげ始めた人たち
『今かくあれども』(メイ・サートン)、『櫂』(宮尾登美子)、『サンダカン八番館』(山崎朋子)、『妻たちの2・26事件』(澤地久枝)、『強制収容所へようこそ』(イリーナ・ラトゥシンスカヤ)、『ワイルド・スワン』(ユン・チアン)
7 スポットライトをあてられた男性像の変化
『高慢と偏見』(オースティン)、『大地』、『カラーパープル』
Ⅱ 世界の動きー女性作家たちをめぐって
1 ヨーロッパにおける女性の目覚めと自立への戦い 保坂一夫
2 日本女性作家たちの外国との関わり 井上健
-1960年代の大庭、有吉、そして倉橋を中心に
「パルタイ」(倉橋)、「三匹の蟹」(大庭)、「非色」(有吉)
3 ネグリチュード(黒人精神)と黒人女性作家の意識 森あおい
-ナルダル姉妹からトニ・モリスンへ
4 激しい近代化へのとまどいと適応 ロナルド・クライン
-アジアにおける新旧価値観の相克
-アジア系アメリカ女性の挑戦
Ⅲ 20世紀女性文学の新視覚
1 20世紀に見る女歌の系譜 安森敏隆
-『みだれ髪』から『サラダ記念日』へ
2 少女マンガとフェミニズム 杉野徹
-1970年代、黄金時代の一断面
4)意識の流れ―大島弓子『バナナブレッドのプディング』の場合
3 実践としての文学と理論 中川成美
1)ジェンダー・アイデンティティという罠―ジュデス・バトラーの場合
2)正当な居場所を求めてー笙野頼子の場合
4 日本人はアメリカの女性作家たちにどのように描かれてきたか 羽田美也子
-ジャポニズムからライザ・ダルビーまで
まだ、大半が未読である。本書を時に手にしながら、ここに挙げられている作品は出来ればすべて読んでみたいと思う。