マルクス詩集  井上正蔵訳

昭和 54 年 6 月 15 日初版発行 昭和 55 年 3 月 25 日 2 版発行

巻末の訳者の「マルクスの詩作について」によると、「特筆したいのは、マルクスの幻視や空想の飛翔の正反対ともいうべき現実直視と批判精神の躍動が、かれの当時の詩作に見られることである。それは主としてベルリンの市民生活に根ざしているものであった。学者や芸術家、演劇や文化など、直接間接、接触した対象に対するするどい考察や批判があらわれている」、「マルクスを人間的に、いや全人的に知ろうとするならば、マルクスを感覚的に読むことが大切であるといわなければならない。こういう意味でお、初期のマルクスの詩は大きくクローズ・アップされなければならない」という。

 

探究リート
ぼくは起ちあがった。もうこれ以上縛られてはいない。
「どこへ行くおつもり?」「世界を見つけにさ!」
「ここには、ゆたかな牧場が一杯あるじゃないの?
下には波、上には星のたわむれ。」
「馬鹿だな、ぼくの旅はあの世へ行くわけじゃないんだよ、
君が砕けようと、空が響こうと。
ぼくは黙ったまま、元気よく足が運ばなかった。
愛の言葉が重い鎖になって。」
「世界は、ぼく自身から現われ出るべきだ、
そして、ぼくの胸へ、それから内部へ降りるのだ。
ぼくの生の流れは潮の跳躍、
ぼくの魂の息は大気の殿堂。」
ぼくは遠くへさまよい、また帰ってくる、
ぼくは世界を担ったり下ろしたり、
そこは星や太陽が躍った、
そして閃光が走り、すべては沈んだ。
不道徳な文学と神秘的な文学

 

きみたちをよく見ると、一つの源泉から
きみたちの濁った水が流れてきている、
きみたちは二人とも決して明るくはならない、
きみたちは破滅の海へ流れ入る。
きみたちは疑いもなく近親者だ、
なぜなら、きみたちがやるのは大胆な嘲り、
きみたちの一人は悪魔とふざけ合う、
他の一人はー神と。

 

やはり詩心を持つという事は大事なことだと改めて思う。