2004年10月15日第1刷発行 2010年11月19日第16刷発行
裏表紙「官吏となり政治の中枢へと進んだ文秀。一方の春児は、宦官として後宮へ仕官する機会を待ちながら、鍛錬の日々を過ごしていた。この時、大清国に君臨していた西太后は、観劇と飽食とに明けくれながらも、人知れず国の行く末を憂えていた。権力を巡る人々の思いは、やがて紫禁城内に守旧派と改革派の対立を呼ぶ。」
第2章 乾降の玉(承前)
順桂は文秀・王逸の2人に、満州貴人の間で密かに語り継がれる葉赫那拉氏(イエホナラの呪いを伝える。西太后は乾降帝が晩年に籠った仏堂に一人で入ると、乾降帝と心の会話をする。国の未来を見通した西太后だからこそその辛い心境を語れる相手は乾降帝しかいなかった。
第3章
富貴寺で生活を始めた春児は黒牡丹から訓練を受け、食事係の周麻子と一緒に高級料亭に出向き、周が奇跡のような料理人の腕を持つことを知る。西太后と光緒帝・楊喜楨は遂に対決し、皆の前で光緒帝に皇后妃嬪の選定後に禅譲するかのごとき約束をする。が西太后は姪を皇后に立てて何も変わらぬように画策する胸のうちを栄禄と李蓮英に明かす。楊は恭親王と酵親王の前に文秀・順桂・王逸を呼び、康有為・譚嗣同を同席させて政治改革の清談を行う。故郷に帰る機会を得た3人のうち王逸は途中で李鴻章を突然訪ねて憂国の大将軍か軍閥買弁か等と尋ねる。李鴻章は自らの胸の内を語り自らに天命はないと本心を打ち明ける。
第4章
春児は黒牡丹の下で3年の修練で立役者に成長し、西太后と光緒帝の前で刺巴傑を演じ切り皇太后宮への出仕を命じられる。西太后に包子を膳進すると、そのまずさに春児や首領らに棒打ちを命じる。が春児が自分のみが棒を受けたいと申し出るとそれを打算と誤解され百の棒を打たれ続ける。ほとばしり出る紅色の血が衣を染める中、春児はかの大総管太監安徳海の声音で唄い、西太后は春児に龍玉の意を知っておるかと尋ねられ、乾降帝が匿した龍玉のありかを教えてたもれと泣き崩れる。
第5章 謀殺
栄録が幾度も革職・左遷されても不死鳥のように呼び戻されるのは、実はかつて西太后の婚約者であったからだ。咸豊帝が西太后に懸想し側室として西太后が権勢を欲しいままにすると、その威光の影に隠れて権勢を誇る。李鴻章が日清戦争で破れると重石が取れて兵部尚書兼総署大臣に昇るが、李が務めた直隷総督兼北洋通商大臣の後任になれず不満を抱く。が皇帝の親政と太后の訓政という二重政権が続くことが自らの栄華を保障する。このため変法派を叩き潰すことを目論む。最後に春児は順桂と出会い、互いの立場の違いを悲しむ。西太后と光緒帝が互いに必要していることを知る春児と、国の行き先を案じて西太后派を敵だと断じる順桂が交わることはない。が、春児は順桂の名を出していないことを告げる。