2014-01-01から1年間の記事一覧

見果てぬ祖国 ホセ・リサール 村上政彦(翻案)

スペインから独立したフィリピンの英雄ホセ・リサールの2つの長編小説を翻案した作品。1896年12月30日に35歳の若さで処刑された彼の魂は、その後のフィリピン独立を求める運動につながる。後にこの2つの小説は学校の教育課程に取り入られることになったそ…

投資アドバイザー有利子 幸田真音

時代は変われど,たかがカネ,されどカネ,を漫画チックに描く漫画チックな物語。筆者の小説は結構好きなので,今後いくつかブログしたいと思います。ちなみに有利子とはゼロ金利時代を意識した筆者独自の感性がつけた主人公の名前です。

宇宙は何でできているのか 素粒子物理学で解く宇宙の謎 村山斉

帯封に *原子全体が野球場だとすると,原子核は野球ボールの大きさ。それよりさらに小さいのが素粒子。 *目に見える星がガスを全部集めても,宇宙全体の重さの4%にしかならない。 *残り96%のうち23%は正体不明の「暗黒物質」。73%はさらに得た…

本能寺の変 431年目の真実

「光秀の末裔がついに明かす!衝撃の真実」という帯封につられて購入したが、大変面白い。ネタばれするようなことは一切書けないけれど、「光秀の定理」の著者垣根涼介さん推薦ともなれば読まずにはいられない。歴史というものは一体誰が作るのかその一旦を…

雪国 川端康成

昭和43年ノーベル文学賞を受賞した有名な川端康成による不朽の名作。冒頭の書き出しを知らない人はいない。新感覚派の代表的作家と言われるが、ただどこがすごいのか、正直まだよく分からない。美しい文章だと思うし、状況描写しつつ、単なる状況描写に止ま…

空気の研究 山本七平

「空気」を研究し,「水」を研究することで,空気に水を差しても無効な程の空気の力を解明している。そして人が本当に空気を把握し得たとき,その人は空気の拘束から脱却している。そこにしか,人類の進歩はあり得ないという。 日下公人(解説)によると,著…

破門 黒川博行

本年度直木賞。エンターテイメントとしては、普通に楽しめる作品ではあるが、どうして直木賞を受賞できたのか、理由が知りたい。桑原と二宮の掛け合い漫才のような軽妙なタッチが、極道のやり方のえぐさを中和させたということ??よくわかりませんでした。

ひとり舞台 脱原発 闘う役者の真実 山本太郎

事務所を離れた理由について、社長から辞めてくれと言われたわけではなく、あくまで自分の信念を貫き、他の人に迷惑をかけたくないとの優しさからだったというのがよくわかります。切々と子供たちに訴えかけていた山本さんの声は耳朶から離れません。この業…

原発ジプシー(増補改訂版) 被爆下請け労働者の記録 堀江邦夫

*財団法人放射線従事者中央登録センターに、かつて原発内労働者として働いていた筆者がセンターを訪ねて自分の体内にどれだけの量の放射性物質が蓄積したのか、内部被ばく量を知りたいと思い、出向いたところ、「教えられない」と断わられたと記載されてい…

自壊する帝国 佐藤優

モスクワに7年あまり駐在した、今や著名人の一人・佐藤優という類まれなる人間力を持つ元外交官による、ソ連崩壊に至る歴史的事実を、人間の内面にまで掘り下げて分析したノンフィクション。サーシャとの深い信頼関係は、佐藤優という人物のすごさを語って…

ファーブル昆虫記 奥本大三郎

55歳の時から約30年かけて書き上げた全10巻からなる自然科学者の古典。 糞転がしで有名なスカラベの話に始まり、ゾウムシを刺して動けなくする蜂の行動を、事実を観察することにより真実を解明していく手法は、忍耐そのものです。 ゾウムシの運動器官を司…

ヘイトスピーチとたたかう! 有田芳生

師岡さんの著作「ヘイト・スピーチとは何か」に刺激されて、もう一冊ヘイトスピーチ関連の書籍を読む。政治家として、法的規制の是非について論じるとともに、日本で現実可能性のある法的規制の具体的な提言に踏み込んでいる点は、評価すべきところもあると…

日本の宗教とキリストの道 門脇佳吉

政治学者の丸山眞男はイエズス会の講演で「日本にはマルキシズムとキリスト教は絶対に入らない。なぜならどちらもしっかりした理論的体系を持っているから」と述べたとか。そして筆者は鎌倉仏教を例に出して確かにそうだと。親鸞は念仏に,日蓮は題目に,道…

采配 落合博満

3つの敵とみな戦っている。1自分,2相手,3数字。 目標を達成するためには必ず一兎だけを追い続けなければならないタイミングがある。 手抜きは叱る。手抜きを放置すると致命的な穴があく。 気心と信頼は別物。 「いつもと違う」にどれだけ気づけるか。 …

エンドロール 鏑木蓮

第2次大戦中に生き残れることができた人達が,その後も生き続け,今は老人となって,独りで死んでいくというストーリのため,「孤独死」がテーマのように扱われている。 *「人って生きたようにしか,死ねないっていうじゃないですか」この言葉がもっとも印…

菜根譚 中国史上最高傑作の処世訓 洪自誠(湯浅邦弘)

明代の末期の作。 魚網の設くるや、鴻則ち其の中に罹る。蟷螂の貪るや、雀又其の後に乗ず。機裡に機を蔵し、変外に変を生ず。智巧何ぞ恃むに足らんや。 *人はつい目前のことにとらわれがちだが、背後に目配りをしないと、意外な顛末に陥る可能性が否定でき…

ヘイトスピーチとは何か 師岡康子

帯封に「それは、差別の扇動ー」とある。 2013年11月1日現在でジェノサイド条約を日本は未批准とのこと(加盟国143カ国に対し)。同年3月にラバト行動計画が報告されたということもこの本で初めて知った。知り得る限り、一番コンパクトにテーマにズバリ切り…

本の「使い方」1万冊を血肉にした方法 出口治明

半端なき教養を身につけた後であるからこそ初めて書ける真の読書術を開陳した書物。新書ではあるものの、読み応え十分。最近西洋絵画にちょっとだけ興味がわいてきたので「聖書に次いで広く読まれた書物」で「これを知らなければ、ヨーロッパの絵画を楽しむ…

創価学会と平和主義 佐藤優

公明党が賛成した集団的自衛権。しかしそれは”名ばかり”のものにすぎない。閣議決定を骨抜きにしたのは、創価学会の平和主義だった。 創価学会が、モンテスキューのいう中間団体という指摘は、面白い。 創価学会の課題として指摘している①ドクトリン形成と②…

松下政経塾とは何か 井出康博

2011年9月10日4刷で読む。季節外れの書ではあるものの、極めて高い支持率で政権を奪取した民主党の現在の体たらくの原因は結局松下政経塾の次から次へと中途半端な政治家を大量生産したことにあるのではないかと思わざるを得なかった。 ちなみに松下幸之助の…

置かれた場所で咲きなさい 渡辺和子(ノートルダム清心学園理事長)

河野進牧師の詩(32頁) こまった時に思い出され 用がすめば すぐ忘れられる ぞうきん 台所のすみに小さくなり むくいを知らず 朝も夜もよろこんで仕える ぞうきんになりたい 水道工事をしている人たちのそばを通りながら語って聞かせる母親の言葉(47頁) …

痴人の愛 谷崎純一郎

私とナオミの小説。理想の女に育て上げようとしていたのに,魔性の女に変身していくナオミに翻弄されていく私。谷崎文学の代表作。耽美派とか言われているのを耳にしたことはあったが,読むのは今回が初めて。大正12年9月1日関東大震災の翌年に大阪朝日新聞…

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 前泊博盛

ポツダム宣言→サンフランシスコ講和条約(1951年9月8日サンフランシスコ・オペラハウス)。 そして旧日米安保条約(同日下士官クラブ)。 さらに日米行政協定(1952年2月28日)→日米地位協定(1960年1月19日)。 かつて外務次官をつとめた寺崎太郎氏によると「本能寺は最後の…

赤い高粱 莫言 井口晃(訳)

2012年ノーベル文学賞を受賞した莫言。かなりグロテスクな小説。血と暴力とセックスが生々しく描かれている。なぜノーベル文学賞を受賞することができたのか、その理由は、私にはまだ読み解けないというのが正直なところです。ただぐいぐい読者を引き込む迫…

誰が「知」を独占するのか デジタルアーカイブ戦争 福井建策

2010年のユーロピアーナ(EU全域にまたがる巨大電子図書館)と2013年の米国デジタル公共図書館の各立ち上げ。MOOCの世界的規模の拡大。そしていつしか進んでいた我が国の国会図書館「電子図書館」と著作権法改正。更にこの世界で痛く頭を悩ませる「…

リッツ・カールトン 超一流サービスの教科書 レオナルド・インギレアリー&ミカ・ソロモン 小川敏子(訳)

はじめに お客さまにとって「唯一の存在」になるには Chapter1 脚立に乗った営繕係ー最高レベルのサービスを実現する Chapter2 顧客満足の4つの要素 完全な商品、気配り、タイミング、トラブル解決 Chapter3 技術としての言葉ーひとつの言葉もおろそかに…

闇に香る嘘 下村敦史

第60回江戸川乱歩賞受賞作。 視覚障碍者、中国残留孤児、腎臓移植という3つのキーワードで、しっかりとしたストーリが組み立てられていて、俊逸な作品です。とりわけ視覚障碍者の日常生活の大変さを細部にわたって書き込んでいるところは、ミステリーという…

蜩の記 葉室麟

ブログ再開します。 己の命を、何のために投げ出すのか。志の高さこそ、人の価値を人々に伝え、またその人そのものを輝かす。それにしても、筆者の落ち着いた文体は、素晴らしい。 小説の最後の方で、秋谷の「未練はない」との言葉への和尚のコメントは、自…

公明党の深層 大下英治

中立的というより、かなり好意的に書かれた本だと思う。同じ著者が「日本共産党の深層」という本も書いているのでそちらも読んでみたい。

青年社長(下)高杉良

上下巻通じて、当たり前だが、すべて渡邊美樹社長の目線で書かれているため、評価は分かれるところだろうと思う。でも年限決めて店頭公開に踏み切る実行力は掛け値なしにすごいと思う。