2021年7月 100分de名著 ボーヴォワール 老い 上野千鶴子

誰しもに訪れ、誰しもが認めない。そんな「老い」の実態を容赦なく暴き出し、「文明のスキャンダル」と捉え直した画期的な一冊。20世紀を代表する知性が老境に入って書き上げた大著を、超高齢化が進む現代社会に引きつけながら読みとく。

 

サルトルとの自由恋愛で知られるボーヴォワールは、21歳の時に3つ上のサルトルと恋人同士になり、次に39歳の時にアメリカ人の作家ネルソン・オルグレンと関係し、更に44歳の時に映画監督のクロード・ランズマンと同棲する。実存主義のキーワード「自由」を掲げ実践したからこそ、恋愛の自由、性愛の自由を抑制しなかった。

「老い」を否定しがちではあるけれども、否定せず受容する必要がある。老いは個人が努力で克服するものではなく、社会の問題であり文明の問題であると捉え直すところにボーヴォワールの独自の視点が示されている。