メディア・コントロール 正義なき民主主義と国際社会 ノーム・チョムスキー 訳鈴木主税

どのように読後感を書けばよいか、悩まずにはいられない。衝撃的な分析だと思う。この衝撃度を文章にする難しさを感じる。

冒頭に「メディアの役割」とあり、民主主義社会の概念に2つあることを指摘している。
第1は、「一般の人びとが自分たちの問題を自分たちで考え、その決定にそれなりの影響をおよぼせる手段をもっていて、情報へのアクセスが開かれている環境にある社会」。
第2は、「一般の人びとを彼ら自身の問題に決してかかわらせてはならず、情報へのアクセスは一部の人間のあいだだけで厳重に管理しておかなければならない」とするもの。
そして実のところ、優勢なのは後者だと理解すべきだと指摘するところから始まる。

この意味を掘り下げているところに本書の面白さ、そして現実社会の怖さがある。そしてそれがリアルであるために非常な怖さを感じさせてくれる一冊である。

言語学に革命を起こすとともに、アメリカの対外政策を厳しく批判し続ける著者の人柄を理解することのできる良本である。